改訂新版 世界大百科事典 「ネスミス」の意味・わかりやすい解説
ネスミス
James Nasmyth
生没年:1808-90
蒸気ハンマーの製作で有名なイギリスの技術者。エジンバラに画家の子として生まれる。高校時代に友人の父が経営する鋳鉄製造工場でさまざまな機械の扱いをおぼえ,単独で作った蒸気機関の模型がエジンバラ大学のレスリー教授の目にとまり,彼の自然哲学の講義への出席を許された。19歳のころ蒸気自動車などを試作,29年機械技術者H.モーズレーの助手となり,モーズレーの死後(1831),34年マンチェスターで蒸気機関,工作機械などの製作工場を創始した。39年ブリストルで建造中の蒸気船グレート・ブリテン号の外輪を支える直径30インチの軸を鍛造するための蒸気ハンマーを設計,グレート・ブリテン号は結局スクリュー推進となったので製作された軸は用いられなかったが,彼の蒸気ハンマーの特許は42年にとられ,とくにイギリス海軍の大型砲の鍛造のために盛んに用いられた。このほか,彼の経営する工場ではフライス盤,平削り盤などの工作機械をはじめ多くの種類の機械を製作した。
彼はまたアマチュアの天体観測家でもあった。1827年にはすでに直径6インチの反射望遠鏡を製作しており,43年以降は天文雑誌に論文を投稿し,51年の博覧会では月の表面の詳細なスケッチを出展し賞を受けた。56年の事業からの引退後,本格的に趣味にうちこんだ。
執筆者:高山 進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報