フライス盤(読み)ふらいすばん(英語表記)milling machine

翻訳|milling machine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フライス盤」の意味・わかりやすい解説

フライス盤
ふらいすばん
milling machine

フライスとよばれる一枚ないし多数枚の切刃をもつ工具を用いて加工を行う工作機械。フライスとは、ドイツ語の「Fräse」や、フランス語およびオランダ語の「Fraise」(襞襟(ひだえり))に由来するといわれている。1800年アメリカのE・ホイットニーが互換性のある銃器の工作用として発明したのがフライス盤の始まりといわれている。フライス盤は、工具に回転運動、また工具と工作物の間に三次元相対運動を与える機械であるが、この相対運動の与え方と用いる工具の種類によって、平面曲面、溝(直溝、ねじれ溝)、カム歯車などの広範な形状を切削することができる。したがって、フライス盤の作業範囲は広く汎用(はんよう)性に富むため、旋盤、ボール盤とともに現在もっとも広く使用されている工作機械の一つである。

 フライス盤は、その大きさ、加工能力により多くの種類に分けられるが、とくに工具と工作物に上下相対運動を与えるための構造上の違いによって、ひざ形とベッド形に区分されている。工作物側を上下させるのがひざ形で、加工工具側を上下させるのがベッド形である。

 ひざ形フライス盤は、主軸の方向が垂直な立て形フライス盤と、水平の横形フライス盤とに分かれ、さらに横形フライス盤のなかで、テーブルや主軸頭などが旋回するものを万能フライス盤という。また、ラム形フライス盤といって、コラム上のラムに主軸頭がつき、そのラムが前後に出入りするものもあり、このなかには、主軸頭が左右に傾斜できるもの、ラムが平面内で旋回するものなどがある。

 ベッド形フライス盤についても、ひざ形と同様に、主軸の方向により立て形と横形がある。ベッド形のなかで、主軸の上下運動および加工物の前後運動を半固定にし、テーブルの左右運動を主体にした大量生産に適したものを生産フライス盤という。

 ひざ形フライス盤は、コラムcolumn、ニーknee、サドルsaddle、テーブルtableの基本構造要素からなり、テーブルとサドルをのせたニーが上下に動き、ニー上のサドルは前後方向に動き、サドル上のテーブルは左右に動き、工作物の三次元運動を可能にしている。主軸はコラムの中に組み込まれている。このフライス盤の最大の特徴は操作性のよいことで、各種の付属装置を取り付けて広範囲の加工を行うことができ、もっとも多く使用されているフライス盤である。一般には小物部品の加工を対象とし、製作個数は中量生産以下で、複雑な切削面や多くの切削面を有する場合に適している。

 ベッド形フライス盤は、ひざ形におけるニーの上下運動をなくし、主軸頭によって上下運動を行わせ、テーブルは床上に固定されたベッド上を往復運動する構造である。したがって加工物の重さに影響されず、重量物の加工に適し、精度も安定している。

 以上のほかに特殊なフライス盤として、平削り盤のバイトのかわりに主軸頭を装備したフライス切削用大型機械のプラノミラーや、ねじフライス盤、工具フライス盤、形彫りフライス盤、ロータリーテーブル形フライス盤などがある。

 フライス盤の場合、とくに作業空間が機械の大きさを表す重要なポイントで、一般に、二番、三番、四番などと、番手を用いて表している。

[清水伸二]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フライス盤」の意味・わかりやすい解説

フライス盤
フライスばん
milling machine

フライスを用いて,平面,曲面,溝,ねじ,歯車などを削り出す工作機械。単純な平面削りよりも,むしろ複雑な加工を得意とする。各種のフライス盤があるが,構造と作業内容から次のように大別される。 (1) 膝 (ニー) 型フライス盤 最も広く使用され,さらに横型・万能・立フライス盤に分けられる。機能を多様化したものを万能フライス盤と呼ぶ。 (2) 生産フライス盤 多量生産を目的に,半自動または全自動化したもので,構造的にも強固である。 (3) 平削りフライス盤 長大な工作物を切削するために平削り盤の構造形式にしたもの。 (4) 特殊フライス盤 特定の加工を対象とする専用機で,型彫り盤,ねじ切りフライス盤,工具フライス盤,カムフライス盤その他がある。以上のフライス盤を数値制御したものを NCフライス盤と呼び,最近多用されている。

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