日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノガン」の意味・わかりやすい解説
ノガン
のがん / 野雁
bustard
広義には鳥綱ツル目ノガン科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Otididaeは約10属23種からなり、ユーラシア、アフリカ、オーストラリアに分布している。全長約36~132センチメートル。最大種はオオノガンArdeotis koriで、アフリカに分布する。日本では、種のノガンOtis tardaのほかに、全長約48センチメートルと小形のヒメノガンO. tetraxが迷鳥として九州で1回採集されている。
種としてのノガンは全長約1メートル。頭頸(とうけい)部は灰色で、雄はあごの両側にひげのような羽毛が生えている。背面は黄褐色で、黒褐色の虫食い模様が一面にあり、初列風切(かざきり)は黒く、次列風切と腹は白い。ヨーロッパから中国東北部にかけて分布し、広いステップや農耕地にすんでいる。一般に留鳥であるが、短い渡りをするものもある。日本には迷鳥としてときどき渡来する。普通、家族群または十数羽の小群で地上に降りて餌(えさ)をあさっているが、警戒心がきわめて強く、人間を見ると非常に遠くまで飛び去る。飛翔(ひしょう)力は非常に強い。食物は種子、穀物、地表の昆虫類などである。一夫多妻で、雄は数羽の雌とつがいになり交尾するだけで、営巣、抱卵、育雛(いくすう)はすべて雌が単独で行う。巣は地上につくり、1腹の卵は3、4個。抱卵期間は約27日である。
[森岡弘之]