ノゲシ(その他表記)Sonchus oleraceus L.

改訂新版 世界大百科事典 「ノゲシ」の意味・わかりやすい解説

ノゲシ
Sonchus oleraceus L.

日本全土の路傍畑地にごく普通にみられるキク科の一・二年生雑草ケシアザミまたハルノノゲシの名もある。ユーラシア熱帯温帯に広く分布する。葉は羽状に切れ込み,不規則な歯牙がある。葉形とともに全体に白粉を帯びる点,切ると白い乳液が出る点がケシに似る。ロゼットで越冬し,4~5月ころ,高さ40~100cmほどの軟らかい中空の茎を上げ,黄色の頭花を十数個つける。頭花は舌状花のみからなり,径2cm内外。瘦果(そうか)には縦と横の条があり,冠毛は白色で絹毛状。種子は直ちに発芽し,7~9月ころ,再び花期を迎える。若菜はゆでて水にさらせば食用となり,家畜の飼料にもされる。中国では熱,ヘビ毒などに効ありとして,民間薬とされる。また冠毛は朱肉の綿として用いられることがある。

 ノゲシ属Sonchus(英名sow thistle)は世界に約45種あり,日本にはほかにオニノゲシS.asper (L.) HillとハチジョウナS.brachyotis DC.がある。オニノゲシはヨーロッパ原産の帰化植物で,近年,都市周辺の荒地に分布を拡大した。ノゲシに似るが,葉に光沢があり,葉縁のとげ針は触れると痛い。また,茎葉基部はノゲシが矢じり形であるのに対し半円形で,瘦果に横条がない点も異なる。ハチジョウナは東アジア北部,日本各地に分布し,北海道,東北地方の沿海地に多い。多年草で,長い横走する地下茎をもち,黄色の頭花は径3~4cmになる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノゲシ」の意味・わかりやすい解説

ノゲシ
のげし / 野芥子
[学] Sonchus oleraceus L.

キク科(APG分類:キク科)の一年草または越年草。ハルノノゲシ(春野芥子)ともいう。全体に粉白を帯び、切ると乳液が出る。名は、これらの点が葉形とともにケシに似ることによる。茎は柔らかく中空で、高さ0.3~1メートル。葉は羽状に切れ込み、縁(へり)に鋭い鋸歯(きょし)があるが、触っても痛くはない。茎葉の基部は矢じり形に茎を抱く。春から秋、舌状花のみからなる黄色で径約2センチメートルの頭花をつける。痩果(そうか)は縦と横の条があり、冠毛は白色で柔らかい。道端や空き地にごく普通に生え、日本全土、およびユーラシア大陸の熱帯から温帯に広く分布する。飼料となり、若菜はゆでてさらすと食用となる。世界中に広く帰化する。日本には中国から伝わったと考えられている。

[森田龍義 2022年3月23日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノゲシ」の意味・わかりやすい解説

ノゲシ(野罌粟)
ノゲシ
Sonchus oleraceus

キク科の二年草。ハルノノゲシ,ケシアザミともいう。北半球の温帯から亜熱帯に広く分布し,また世界的な雑草ともなっている。日本各地の路傍や荒れ地に普通にみられる。高さ約 1mとなり,茎は中空で縦に細い条溝がある。葉は不規則に羽裂しアザミの葉に似ているが,とげがない。無柄で葉の基部は茎を抱いている。春から夏にかけて,茎の上部に枝を生じ数個ずつ黄色の頭状花をつける。頭状花は全部舌状花のみから成り,花後,白い冠毛を生じる。全草傷つけると苦みのある白色の汁が出る。若いものは食用になる。

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百科事典マイペディア 「ノゲシ」の意味・わかりやすい解説

ノゲシ

ハルノノゲシとも。キク科の二年草。日本全土,ユーラシア大陸の熱〜温帯に分布し,路傍や畑にはえる。茎は高さ50〜100cm。アザミに似るが全体に軟らかく,ちぎれば白汁が出る。葉は羽状に裂け基部はとがった耳状となる。頭花は径2cm内外,黄色の舌状花からなり,4〜7月開花。果実は長さ3cm,褐色に熟す。茎や葉は食べられる。本種に比し全体に大型のオニノゲシは,葉が厚くて硬く,基部はまるい耳状となる。

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