改訂新版 世界大百科事典 「ノブキ」の意味・わかりやすい解説
ノブキ (野蕗)
Adenocaulon himalaicum Edgew.
山地の木陰や湿った谷間に生えるキク科の多年草。地下茎はよく発達する。茎は直立し,高さ60~100cm,茎の下部に集中する葉は三角状心形でフキの葉に似ているが,柄に翼があり,裏面に白綿毛が密にある。花期は8~10月。頭花には縁に7~11個の雌花があり,内に7~18個の両性花がある。いずれも花冠は長さ1.5~2mmと小さい。雌花は実るが,両性花は実らない。瘦果(そうか)は狭倒卵状で,長さ6~7mm,上半部分に多数の有柄の腺体があるが,冠毛はない。この腺体は瘦果が動物によって運ばれるのにつごうがよい。南千島,北海道~九州,朝鮮,中国,ヒマラヤに分布する。
ノブキ属Adenocaulonにはノブキ以外に新大陸の太平洋側に3種知られている。北アメリカのA.bicolor Hook.,中央アメリカのA.lyratum Blake,南アメリカのA.chilense Less.である。いずれも互いによく似ていて,属としてのまとまりはよいが,キク科の中での系統関係については,まだよくわかっていない。
執筆者:小山 博滋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報