日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノボセロフ」の意味・わかりやすい解説
ノボセロフ
のぼせろふ
Konstantin Novoselov
(1974― )
物理学者。ロシア(当時はソ連)中部のスベルドロフスク州の都市ニジニー・タギル生まれで、イギリスとロシアの国籍をもつ。モスクワ物理技術大学大学院を修了後、オランダのナイメーヘン大学の研究者となり、このときアンドレイ・ガイムの共同研究者となった。その後、ガイムとともにイギリスのマンチェスター大学へ移ったが、博士号はナイメーヘン大学から2004年に取得した。グラフェンGrapheneという物質の製法を研究開発。2010年に「二次元物質グラフェンに関する革新的な実験」の業績により、ガイムとともにノーベル物理学賞を受賞した。
2004年に、ノボセロフとガイムの二人は、厚さ1ミリメートルの黒鉛を粘着テープではがすことを繰り返し、炭素1個分の薄さの物質をつくることに成功した。この物質は、炭素が六角形につながったシート状のものであり、厚みは原子1個分しかない。これがグラフェンである。そして、グラフェンを丸めた形にしたものがカーボンナノチューブである。
グラフェンは、金属ではないのに電気を通し、室温でもシリコンの1000倍の速さで電子が移動する。また、グラフェンはガスも通さないほど緻密だが透明であるという物理特性が確認され、シリコンに代わる電子素材として世界中で応用研究が盛んになった。携帯端末の透明なタッチパネル、太陽電池、超高速トランジスタなど、グラフェンを用いた実用機器の利用が爆発的に広がっている。
[馬場錬成]