日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノルド諸言語」の意味・わかりやすい解説
ノルド諸言語
のるどしょげんご
北欧のスウェーデン、フィンランド西・南部、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、フェロー諸島で話されている諸言語。「ノルド」とは「北」の意味。一般に北欧語、スカンジナビア諸語ともいう。系統的にはインド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派の一つで、英語やドイツ語などの西ゲルマン語に対して、北ゲルマン語ともよばれる。各言語の話者人口は、スウェーデン語約800万、デンマーク語約500万、ノルウェー語約400万、アイスランド語約20万、フェロー語約4万。
歴史的には、バイキング時代にアイスランドやフェロー諸島に植民したのはノルウェー人である。そののち孤島という地理的条件もあって、これら島々の言語はあまり変化せず、古い要素を残している。たとえばアイスランド語は、名詞の複雑な格変化を保っており、語頭に強勢を置くというゲルマン語古来の規則を厳守している。また語彙(ごい)の純粋さを保つため、外国語から直接借用するかわりに、たいてい自国の語で置き換える。これに対しスウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語は、ともに形態を簡略化する方向に変化し、中世には低地ドイツ語の影響が大きかったが、現代でも英語などから多くの語を取り入れている。これら3か国語は方言程度の違いであり、互いに話が通じるほどである。ノルド諸言語に共通な形態として、名詞の定形語尾、動詞の中受動語尾がある。
[福井信子]
『エリアス・ヴェーセン著、菅原邦城訳『新版 北欧の言語』(1988・東海大学出版会)』▽『アラン・カーカー他編、山下泰文他訳『北欧のことば』(2001・東海大学出版会)』