ハウスホーファー(読み)はうすほーふぁー(英語表記)Karl Haushofer

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハウスホーファー」の意味・わかりやすい解説

ハウスホーファー(Karl Haushofer)
はうすほーふぁー
Karl Haushofer
(1869―1946)

ドイツの軍人地政学者。軍人として育ち、第一次世界大戦中、陸軍少将になる。1921年ミュンヘン大学の地理学教授となり、地政学を提唱し、自然地理的環境と政治との相互関連を強調した。同年ヒトラーに会い、学生のなかにヘス(のちにナチスの指導者)がいたこともあって、ナチス党の理論家たちと接触し、「生存圏」の概念などによりナチズムの対外侵略を合理化した。だが1938年ごろには、妻がユダヤ系であったこともあり、ナチズムに幻滅していたといわれる。ベルリン大学地政学教授だった子息アルブレヒトAlbrecht(1903―1945)が反ヒトラー抵抗運動のかどで逮捕されたとき、彼も逮捕された。アルブレヒトは敗戦直前の1945年4月に射殺されたが、これを深く悲しみ、自殺した。

[吉田輝夫]


ハウスホーファー(Albrecht Haushofer)
はうすほーふぁー
Albrecht Haushofer
(1903―1945)

ドイツの詩人劇作家ミュンヘン生まれ。ベルリンで地政学の教授の職にあり、イギリスに亡命したナチス幹部、ヘスの下で外務省参与をも兼ねたこともあった。ヒトラー暗殺を企てた1944年7月事件に加わっていたかどで敗戦直前に逮捕され、処刑された。文学者としては34年以来もっぱら劇作に手を染め、ローマ時代に題材をとった『スキピオ』(1934)、『アウグストゥス』(1939)で鋭利な時代批評を行った。死の直前の『モアビート十四行詩(ソネット)』(1946没後刊)は、反ナチス文学の精髄とされる。

飯吉光夫

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハウスホーファー」の意味・わかりやすい解説

ハウスホーファー
Haushofer, Karl

[生]1869.8.27. ミュンヘン
[没]1946.3.13. 南バイエルン,ワイルハイム近郊
ドイツの政治地理学者。ミュンヘン大学教授の息子として生れ,第1次世界大戦の終りまで軍人 (准将) 。 1908~10年日本に軍務で滞在。政治地理学の世界的規模の諸問題に目ざめ,24年『地政学報』 Zeitschrift für Geopolitikを創刊。 20~30年代はミュンヘン大学で地政学を講義,彼の理論は教え子の R.ヘスを通じてナチス・ドイツの侵略主義の正当化に利用された。第2次世界大戦末期の 1944年ベルリン大学で教授をしていた息子のアルプレヒトが七月二十日事件に関連したためゲシュタポに逮捕された。戦後ニュルンベルク裁判で無罪となったが,息子の死を悲しみ妻とともに自殺。主著"Geopolitik des pazifischen Ozeans" (1924) 。

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