日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハエジゴク」の意味・わかりやすい解説
ハエジゴク
はえじごく / 蠅地獄
[学] Dionaea muscipula Ellis
モウセンゴケ科(APG分類:モウセンゴケ科)の多年草。北アメリカのサウス・カロライナ州、ノース・カロライナ州、フロリダ州の湿地に自生する食虫植物で、観賞用または教材用として栽培される。葉は4~8枚が根生し、長さ3~12センチメートル、葉柄は長くて広い翼がある。葉身は二枚貝の形をしており、ほぼ円形で先端は切れ込み、縁(へり)には長い刺毛があり、主脈を軸にして左右両面が閉じると互いに組み合わさる。葉面には多数の腺(せん)があって昆虫を誘い、また、3対の感覚毛があり、このどの1本にでも虫が続けて二度触れると急激に両面を閉じて抱え込み、やがて内面の腺から消化液を分泌し、しだいに分解吸収する。名は、この捕虫作用に由来し、別名ハエトリソウ(蠅取草)という。6月ころ、20センチメートルほどの花茎を出し、茎頂に白色の5弁花を10個ほどつける。
ミズゴケで鉢植えにし、受け皿に水を入れてつねに多湿にする。夏は戸外の半日陰で育て、冬は凍らないように保護する。繁殖は、花期後、植え換えをする際に株分けによる。また実生(みしょう)も可能である。
[松岡清久 2020年12月11日]