ハチビキ(読み)はちびき(その他表記)Japanese rubyfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハチビキ」の意味・わかりやすい解説

ハチビキ
はちびき / 葉血引
Japanese rubyfish
bonnetmouth
[学] Erythrocles schlegelii

硬骨魚綱スズキ目ハチビキ科に属する海水魚。青森県以南の太平洋沿岸と、新潟県以南の日本海沿岸、小笠原(おがさわら)諸島、南西諸島、九州・パラオ海嶺(かいれい)、朝鮮半島南部東岸、台湾、南シナ海、アフリカ東岸などの海域に分布する。体は細長い紡錘形で、わずかに側扁(そくへん)する。口は小さく、斜め上を向く。口を開くときには上顎(じょうがく)は大いに伸びるが、閉じると下顎が上顎より突出する。上顎の後端は拡大し、目の前縁下に達する。上下両顎に微小な歯がある。上主上顎骨は明瞭(めいりょう)。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の隅角(ぐうかく)部に非常に弱い鋸歯(きょし)がある。主鰓蓋骨に2本の棘(きょく)があり、上方のものはきわめて弱い。鰓腔(さいこう)(えらが入っている空所)の後縁に2個の肉質突起がある。鰓耙(さいは)は上枝に9~10本、下枝に25~29本。体と頭部は口唇を除いて粗雑な櫛鱗(しつりん)で覆われる。尾柄(びへい)部に側隆起があり、大形個体では顕著である。側線鱗数は65~75枚。背びれと臀(しり)びれの軟条部に鱗鞘(りんしょう)(基底付近を覆う鱗)がある。背びれは腹びれ基底上方から始まる。背びれは10~12棘10~12軟条で、棘部と軟条部との間に深い欠刻(切れ込み)がある。臀びれは3棘9~10軟条、胸びれは18~20軟条。尾びれは深く二叉(にさ)する。体色は背側面が暗赤色または緑色がかった赤色で、腹側面が銀色がかった淡赤色。胸びれと尾びれは真紅色で、その他のひれは赤色みを帯びる。水深150~300メートル岩礁域に生息し、釣り、底引網で漁獲される。最大全長は約60センチメートルに達する。肉は赤みを帯び、やや美味である。

片山正夫・尼岡邦夫 2021年2月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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