ハナサキガニ(その他表記)Paralithodes brevipes

改訂新版 世界大百科事典 「ハナサキガニ」の意味・わかりやすい解説

ハナサキガニ
Paralithodes brevipes

十脚目タラバガニ科の甲殻類食用になり水産業上の重要種。近縁のタラバガニなどに比べると分布が狭く,カムチャツカ半島から千島列島を経て積丹岬以北の北海道沿岸に分布し,浅海岩場にすむ。生息密度が高いのは千島列島から根室近海で,幼ガニは岩礁でも見られる。和名根室半島の別名である花咲半島にちなんだものである。甲長,甲幅とも15cmほどで,成体は一様に焦茶色であるが,甲の周縁やはさみが赤褐色のこともある。ゆでると鮮やかな赤色となる。甲面には各甲域に数本ずつ一定数の鋭い突起があり,甲縁にも前縁に6本,前側縁に4本,後側縁に6本,後縁に12本ほどの突起が並んでいる。額角(がつかく)の中央棘(きよく)は下へ曲がっており,先端が丸みを帯びている。歩脚は太くて短く,やはり強大な突起が多数ある。雑食性らしい。一年中抱卵している。カニ缶詰とされる量はごく少なく,ほとんどはゆでてから冷凍した状態で出荷される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナサキガニ」の意味・わかりやすい解説

ハナサキガニ
Paralithodes brevipes

軟甲綱十脚目タラバガニ科。甲長,甲幅とも 15cm内外。外形タラバガニに似るが,歩脚が太く,また額角中央棘の先端が丸い。北海道沿岸からロシアカムチャツカ半島ベーリング海に分布するが,根室市近海,千島列島に多産する。浅海に産し,幼個体は磯の海藻の間でも見られる。重要な食用種で,ゆでて冷凍にしたものが市場に出る。甲は青みがかった淡赤紫色であるが,ゆでると濃い朱赤色になる。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナサキガニ」の意味・わかりやすい解説

ハナサキガニ
はなさきがに / 花咲蟹
[学] Paralithodes brevipes

節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目タラバガニ科に属する海産動物。水産業上の重要種で、カニ型であるが分類学的にはタラバガニと同様に異尾類(ヤドカリ類)に属する。日本海北部、北海道からベーリング海にかけて分布するが、かつて花咲半島(はなさきはんとう)(根室半島)に多産したのが和名の由来である。浅海にすみ、小形個体は磯(いそ)の海藻の間でもみられる。甲幅、甲長とも15センチメートルほどで、多数の突起があり、それらの間は滑らかである。タラバガニに似ているが、額角(がっかく)の中央棘(きょく)が短くて先端が丸いこと、歩脚が太くて短いことで区別される。生時は暗赤紫褐色で、ゆでると鮮やかな赤色になる。タラバガニの強い漁業規制とともに、本種の資源的価値が見直されるようになった。

武田正倫]


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栄養・生化学辞典 「ハナサキガニ」の解説

ハナサキガニ

 [Paralithodes brevipes].エビ目ヤドカリ下目タラバガニ属のカニ.食用にする.

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世界大百科事典(旧版)内のハナサキガニの言及

【照葉樹林文化】より

…このほか,若い男女が山や丘に登り,歌をうたい交わして求婚する歌垣の慣行や,生命は山に由来し,死者の魂は死後再び山に帰っていくという山上他界の観念,春の農耕開始に先だって狩猟を行い,獲物の多寡で豊凶を占う儀礼的狩猟の慣行など,山をめぐる各種の習俗にも共通の特色がある。また,〈記紀〉の神話のなかにあるイザナギ・イザナミ型の兄妹神婚神話,あるいはオオゲツヒメなど女神の死体からアワなどの作物が発生する死体化生神話,さらには羽衣伝説や花咲爺の説話など,神話や説話の要素でも,照葉樹林帯に共通するものが多い。 このように東アジアの照葉樹林帯の民族文化のなかにみられる諸特色と日本の伝統的文化の間には,きわめて多くの共通性と強い類似性がみられることが明らかになってきた。…

【屁】より

…さらに《放屁論》後編では昔話の花咲男(爺)とは放屁男のことだと語っている。ところで花咲爺といえば室町時代の絵巻《福富草紙》は,放屁芸でにわか成金となった高向秀武と,彼にだまされて下剤の朝顔の種を飲み中将の前に糞をまき散らす福富翁の物語である。その筋書は枯木に花を咲かすくだりに似た構成だが,狡猾(こうかつ)な秀武の腕に福富の老妻がかみつく結末までの滑稽譚は,道徳教育的な花咲爺のお伽噺と趣を異にする。…

※「ハナサキガニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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