ハナヤスリ(その他表記)Ophioglossum

改訂新版 世界大百科事典 「ハナヤスリ」の意味・わかりやすい解説

ハナヤスリ (花鑢)
Ophioglossum

シダ類ハナヤスリ科に属する小型の地上生の多年草。栄養葉の上につく胞子葉が穂状なので,それをやすりにみたてて和名がついた。根茎は30cm以下,直立し,年に1~5枚の葉をつける。先端に芽がある。茎から出る根は地中をはい,ところどころで不定芽をつけ,それが新しい個体になるので群生する。栄養葉はふつう有柄,葉身は単葉でおおむね楕円形,全縁,葉脈は網目状である。胞子葉は葉柄上部に出て,穂状。栄養葉を欠き胞子葉だけのものもある。胞子囊は軸上部の両側につき,軸の組織の中に埋まっている。20~30種が世界中に分布し,日本でも数種が広く分布する。ハナヤスリの仲間に近いコブランOphioglossum(=Ophiodermapendulum L.は亜熱帯林樹上に着生し,葉身は長いものでは1mにもなり,1~3回分裂して垂れ下がる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナヤスリ」の意味・わかりやすい解説

ハナヤスリ
はなやすり / 花鑢
adder's-tongue
[学] Ophioglossum vulgatum L.

ハナヤスリ科の夏緑性シダ。ヒロハハナヤスリともいう。小さく直立する根茎から出る共通柄の上に全縁巣葉を1枚と、胞子嚢穂(のうすい)を1本つける。北半球の温帯に広く分布し、日本では沖縄諸島を除く全国の落葉樹林下や原野に群生する。ハナヤスリ類は種の区別がむずかしいが、胞子の模様などの微細な構造で分類し、日本にはこのほかハマハナヤスリO. thermale、コヒロハハナヤスリO. petiolatum、チャボハナヤスリO. parvumなど8種がある。若葉はひたし物などにして食用にする。中国では清熱解毒や毒蛇の咬傷(こうしょう)に効果のある薬草とされている。また、ヨーロッパでは草汁を目薬としたり、葉から軟膏(なんこう)をつくったりする。

[栗田子郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナヤスリ」の意味・わかりやすい解説

ハナヤスリ(花鑢)
ハナヤスリ
Ophioglossum vulgatum; adder's tongue fern

ハナヤスリ科の夏緑性シダ植物で,ヒロハハナヤスリともいう。根茎は円柱状で短く,直立する。葉は長さ 20cmぐらいで毎年葉を1本だけ生じ,栄養葉は単葉で広卵形,楕円形,広披針形と変化があり葉柄をもたない。胞子葉は細長く直立し,柄は栄養葉の基部で包まれる。胞子は初夏熟し,表面に網目模様がある。ハナヤスリの仲間は,根を広く伸ばして不定芽を生じ,それによって栄養体生殖をして繁殖する。日本には本種のほかにコヒロハハナヤスリ O. petiolatum,ハマハナヤスリ O. thermale,サクラジマハナヤスリ O. kawamuraeなどが知られている。

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