ハマナツメ (浜棗)
Paliurus ramosissimus (Lour.) Poir.
暖かい地方の海岸近くに生え,ナツメによく似た葉をつけるクロウメモドキ科の落葉灌木。基部から株立ちし,徒長枝には托葉の変形したとげがある。葉は卵円形で,細かい鈍鋸歯があり,3脈が顕著。表面は無毛でつやがある。花は8月ころ,枝の上部の葉腋(ようえき)に数個ずつつく。淡緑色で,萼片は三角形で5枚,花弁は萼片と互生し,ごく小型で,内におしべを包み込む。黄緑色の花盤があり,それに埋まるようにめしべがある。果実はコルク状の組織に包まれた乾果で,径約1.5cm。上部には3浅裂して歯牙のある広い翼を有する。本州(東海道以西),四国,九州,琉球,済州島,台湾,中国大陸,インドシナに分布する。地中海沿岸から中国大陸に分布するセイヨウハマナツメP.spinachristi Mill.(英名Christ's-thorn)はキリストの荆(いばら)の冠をつくった植物といわれている。
執筆者:岡本 素治
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ハマナツメ
はまなつめ / 浜棗
[学] Paliurus ramosissimus (Lour.) Poir.
クロウメモドキ科(APG分類:クロウメモドキ科)の落葉低木。高さ約3メートルに達し、枝は灰褐色でよく分枝する。若い木には托葉(たくよう)の変形した刺(とげ)がある。葉は広卵形で長さ3~6センチメートル、3脈が目だつ。8~9月、径約5ミリメートルの淡緑色花を開く。果実は半球形の堅果で軟毛が生え、広い翼がある。海岸近くに生え、東海地方以西の本州から沖縄、および朝鮮半島、中国、インドシナ半島に分布する。ハマナツメ属は5種からなり、東アジア、ヨーロッパ南部に分布する。
[門田裕一 2019年12月13日]
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ハマナツメ(浜棗)
ハマナツメ
Paliurus ramosissimus
クロウメモドキ科の落葉低木で,サルカキイバラともいう。中部日本以西の暖地の海岸近くに生える。多数分枝し,小枝はジグザグに曲り,若枝には毛がある。葉は卵形で先端がへこみ縁に鈍鋸歯があって,若葉には下面に毛が疎生する。3本の主脈が縦に走り,下面に隆起する。托葉は針状になる。夏に,葉腋に淡緑色の小花を数個,短い柄で束生する。花弁,萼片とも5枚で,萼片には毛がある。果実は径1~2cmの半球形で,白い短毛が一面に生える。
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世界大百科事典(旧版)内のハマナツメの言及
【納豆】より
…室町期になると納豆,唐(から)納豆と呼ばれ,のちには寺院でつくることが多かったため寺納豆ともいった。京都では大徳寺納豆,天竜寺納豆などの名が知られ,遠江(とおとうみ)浜名湖畔の大福寺でつくられたものは江戸初期から浜名納豆(浜納豆とも)として著名であった。現在では,柔らかく煮たダイズにショウユコウジカビを植えてこうじ豆をつくり,塩水に浸漬(しんし)して3~4ヵ月発酵させたのち,豆をとり出して乾燥する。…
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