日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハルナック」の意味・わかりやすい解説
ハルナック
はるなっく
Adolf von Harnack
(1851―1930)
ドイツのプロテスタントの代表的な教会史家。ルター研究で知られる神学者テオドシウス・ハルナックTheodosius Harnack(1817―1889)の子として、ロシアのドルパットで5月7日に生まれる。生地とライプツィヒの大学で神学を学んだのち、ライプツィヒ大学の教会史教授となる。ギーセンとマールブルク大学の教授を経て1888年以降ベルリン大学の教授となる。自由主義神学の立場にたつリッチュルの学風を受け継ぎ、グノーシス主義研究をはじめ、広範な歴史神学の研究を発表。主著『教理史』3巻(1885~1889)では、古代の三一論(三位(さんみ)一体論)教理の成立をキリスト教の漸進的ギリシア化としてとらえ、急激なギリシア化から異端が生まれたとする。主著に『キリスト教の本質』(1900)、『3世紀までのキリスト教の宣教と展開』(1903)、『マルキオン』(1921)などがある。キリスト教と近代文化の総合を目ざし、プロイセンの文化行政にも参画して、国立図書館長などを兼任した。1930年6月10日旅行先のハイデルベルクにて没した。
[小川圭治 2018年1月19日]
『山谷省吾訳『キリスト教の本質』(1977・玉川大学出版部)』