改訂新版 世界大百科事典 「ハロゲン化鉱物」の意味・わかりやすい解説
ハロゲン化鉱物 (ハロゲンかこうぶつ)
halide mineral
ハロゲン元素(F,Cl,Br,I,At)の地殻中の存在度はフッ(弗)素Fと塩素Clが他に比べて圧倒的に多く,それぞれ独立の鉱物をつくる。フッ素は火成岩中につねに存在し,フッ素のイオン半径が水酸基OHのそれに等しいので,角セン(閃)石や雲母の水酸基の位置に少量含まれることが多い。フッ素を含む鉱物中で蛍石CaF2は資源的に重要であり,また氷晶石Na3AlF6も1970年代の初めまで天然産のものがアルミニウム製錬で利用されていた(現在では人工物が用いられている)。その他フッ素銀星石AlF3・H2Oや希土類のフッ化物(LaF3など)も産出するが,鉱物標本程度の産出量である。塩素も岩石中に存在し,ケイ(珪)酸塩ではソーダライトNa8(AlSiO4)6Cl2,硫酸塩,炭酸塩ではクロロチオナイトK2Cu(SO4)Cl2,フォスゲナイトPb2(CO3)Cl2などの鉱物をつくる。資源的に重要なものは海水などが蒸発してできた蒸発残留鉱床中の岩塩であって,食塩,ナトリウム,カリウム,塩素などの原料である。またAgCl,PbCl2,CuClなども鉱床の周辺部に産出する。臭素Brは岩石中の含有量も少なく,ケイ酸塩鉱物の中などにはあまり含まれていない。臭素を主成分とする鉱物としては,銀鉱床の酸化帯に産出する臭銀鉱AgBrがある。資源としては塩湖の水などから回収している。ヨウ(沃)素Iは通常の岩石中では分散していて,独立した鉱物をつくるほど濃集しない。金属鉱床の酸化帯にヨウ銀鉱AgI,マーシャイトCuIなどが産出する。またチリのラウタロの硝石鉱床からラウタライト(ヨウ化石灰)Ca(IO3)2が産出する。これら鉱物中のヨウ素は生物源のものと考えられている。ヨウ素の主要生産国は日本で,新潟県,千葉県の天然ガスに伴う地下塩水から回収している。アスタチンAtは1940年にビスマスにヘリウムイオンをあててつくり出された元素であるが,ポロニウムPoのβ崩壊により天然にもわずかに存在している。
執筆者:嶋崎 吉彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報