氷晶石(読み)ヒョウショウセキ(英語表記)cryolite

翻訳|cryolite

デジタル大辞泉 「氷晶石」の意味・読み・例文・類語

ひょうしょう‐せき〔ヒヨウシヤウ‐〕【氷晶石】

ナトリウムアルミニウム弗化物ふっかぶつからなる鉱物無色または白色ガラス光沢がある。単斜晶系溶剤としてアルミニウム冶金やきん使用クリオライト

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精選版 日本国語大辞典 「氷晶石」の意味・読み・例文・類語

ひょうしょう‐せき ヒョウシャウ‥【氷晶石】

〘名〙 ナトリウムとアルミニウムの弗化物。組成式 Na3AlF6 単斜晶系。無色または帯赤色のガラス光沢のある塊で、条痕は白色。約五六〇度で半透明の結晶体に変わる。ペグマタイト鉱床中から産するほか、人工的に蛍石から作られる。硫酸に溶けて弗化水素を発生。アルミニウム精錬用融剤、乳白ガラスの白濁剤として利用。〔鉱物字彙(1890)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「氷晶石」の意味・わかりやすい解説

氷晶石
ひょうしょうせき
cryolite

複ハロゲン鉱物の一つ。アルミニウムの電解精錬の際の溶剤として重要である。ある種のアルカリ花崗(かこう)岩質ペグマタイト中に多産し、またある種の流紋岩中、カーボナタイト、アルカリ性条件下で生成された堆積(たいせき)岩中に産する。日本からはまだ報告されていない。自形は擬正方短柱状であるが、きわめてまれである。ろうそくなどの炎で弾けたように砕片化する。塩化アルミニウム水溶液に溶解する。英名ギリシア語で氷あるいは霜を意味するクルオスkruosに由来する。

加藤 昭]

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改訂新版 世界大百科事典 「氷晶石」の意味・わかりやすい解説

氷晶石 (ひょうしょうせき)
cryolite

鉱物の一種。化学組成はNa3AlF6。単斜晶系に属し,通常塊状集合体として産出し,しばしば集片状に双晶をなす。{001},{110}に剝離し,断口は不規則。無色,白・褐・赤色,まれに黒色を呈し,ガラス~油脂光沢を有する。モース硬度2.5,比重2.97。脆弱である。グリーンランド西部の大きなペグマタイト鉱床といわれるイビットゥートIvigtutが経済的な唯一の産地であったが,1969年に閉山した。世界各地に少量産出するが,現在経済的に採掘されているのはデンマークだけで,年間1000t程度である。アルミニウム製錬の際アルミナAl2O3を電解するときの溶剤として使用される。現在はフッ化水素HFに水酸化アルミニウムAl(OH)3を溶解し,これを苛性ソーダまたは炭酸ソーダと中和し沈殿させてつくる人工氷晶石が多く用いられている。名前は,氷のように見えるため,ギリシア語のkryos(冷気),lithos(石)に由来する。
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化学辞典 第2版 「氷晶石」の解説

氷晶石
ヒョウショウセキ
cryolite

Na3[AlF6].グリーンランドのペグマタイト中に産出する.そのほかでは天然の産出は少ないが,人工氷晶石がつくられている.単斜晶系,空間群 P 21/n,格子定数 a0 = 0.547,b0 = 0.562,c0 = 0.782 nm.β = 90°11′.単位胞中に2個の基本組成が入る.密度2.97 g cm-3.硬度2.5.普通,無色または白色で,ときに褐色や赤色.塊状で産出することが多い.また,集片双晶も多くみられる.条痕は白色.560 ℃ で立方晶系の高温型に転移する.融点1020 ℃.アルミニウムの電解精錬の融剤に用いられる.

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百科事典マイペディア 「氷晶石」の意味・わかりやすい解説

氷晶石【ひょうしょうせき】

アルミニウム製錬のときの溶剤として重要な鉱石鉱物。組成はNa3AlF6。単斜晶系,塊状の結晶を示す。硬度2.5,比重2.97。ガラス光沢があり,無色か白色または帯赤褐色。西グリーンランドの花コウ岩中の大きな鉱床からおもに産出。蛍石を原料に人工氷晶石も合成,使用されている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「氷晶石」の意味・わかりやすい解説

氷晶石
ひょうしょうせき
cryolite

Na3AlF6 。単斜晶系。比重 2.97,硬度 2.5。無色または白色,ときに赤色,褐色など。条痕は白色。 560℃で立方晶系の高温相に転移。アルミニウムなどの冶金用融剤として用いられる。ペグマタイト中に,ほかのハロゲン化鉱物とともに産出する。

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