日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハンゴンソウ」の意味・わかりやすい解説
ハンゴンソウ
はんごんそう / 反魂草
[学] Senecio cannabifolius Less.
キク科(APG分類:キク科)の多年草。茎は直立し、高さ2メートルに達する。茎葉は柄があって互生し、1、2対、羽状に深裂する。7~9月、茎頂に大形の散房状花序をつくり、径約2センチメートルの黄色の頭花を多数つける。頭花は舌状花が5~7個と、多数の管状花からなる。高原や深山の湿った草地に生え、中部地方以北の本州、北海道、および朝鮮半島、中国、シベリア東部、樺太(からふと)(サハリン)、カムチャツカ、アリューシャンなどに分布する。若い茎はフキのような風味があり、食用となる。近縁種キオンは、葉は長楕円(ちょうだえん)形である。
[小山博滋 2022年3月23日]
文化史
反魂とは死者の魂を呼び返す意味。江戸時代は薬として栽培されたらしく、『広益地錦抄(こうえきちきんしょう)』(1719)では反魂草を「はんこうそう」と読ませ、薬草の部で扱った。樺太(からふと)(サハリン)のアイヌは、焼いてその灰を湿疹(しっしん)の治療に使い、根を煎(せん)じて、性病や関節炎の患部を洗った。北海道のアイヌはオオウバユリの鱗茎(りんけい)をつぶしてどろどろにした中にハンゴンソウの葉を入れ、粘りをとったという(知里真志保(ちりましほ)著『分類アイヌ語辞典』植物篇(へん)より)。
[湯浅浩史 2022年3月23日]