ハーベー(読み)はーべー(英語表記)William Harvey

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハーベー」の意味・わかりやすい解説

ハーベー
はーべー
William Harvey
(1578―1657)

イギリスの医師。血液循環の発見者。フォルクストンに生まれる。1597年ケンブリッジ大学のゴンビル・キース・カレッジを卒業し、イタリアのパドバ大学に留学して医学を修め、1602年に医学と哲学学位をとり、帰国後ケンブリッジ大学の学位も受けた。ロンドンで開業しながら、ロイヤル・カレッジ・オブ・フィジシャンの講師を兼ね、1609年に聖バルソロミュー病院の医員に採用された。1615年ロイヤル・カレッジ・オブ・フィジシャンのラムレー講師(教授相当)に任ぜられ、1616年から外科と解剖学の講義実習を受け持った。多くの冷血動物や温血動物の生体解剖によって、心臓の動きや弁膜の機能の解剖生理学的研究を行い、大循環、小循環を明らかにした。1628年に名著『動物における心臓と血液の運動に関する解剖学的研究』Exercitatio anatomica de motu cordis et sanguinis in animalibus(四つ折判72ページの小冊子)を、フランクフルト・アム・マインで出版した。

 ハーベーの血液循環説は実験と計数を基にした申し分ないものだったが、それでも賛否両論が巻き起こった。とくにパリ大学の学長で解剖学者のリオランJean Riolan Jr.(1580―1657)は反対の先鋒(せんぽう)にたった。しかし、デカルト、ブラウンThomas Browne、グリソンFrancis Glisson(1597―1677)、シルビウスらの賛成を得て、ハーベーの学説は従来のガレノスの説を完全に覆し、近代生理学の基盤となった。ジェームズ1世、チャールズ1世の侍医を務め、王の信頼を得て、上位常勤侍医として、ホワイトホールに住み、ピューリタン革命で王が処刑されるまで、その職にあった。晩年胎生学の研究に没頭し、1651年『動物の発生について』を出版し、「すべての動物の発生は卵から」を主張した。痛風に悩んだが、1657年脳出血で80年の生涯を閉じた。

古川 明]

『阿知波五郎著『血液は循環する――ハーベイ伝』(1976・国土社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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