イギリスの医師。血液循環の発見者。フォルクストンに生まれる。1597年ケンブリッジ大学のゴンビル・キース・カレッジを卒業し、イタリアのパドバ大学に留学して医学を修め、1602年に医学と哲学の学位をとり、帰国後ケンブリッジ大学の学位も受けた。ロンドンで開業しながら、ロイヤル・カレッジ・オブ・フィジシャンの講師を兼ね、1609年に聖バルソロミュー病院の医員に採用された。1615年ロイヤル・カレッジ・オブ・フィジシャンのラムレー講師(教授相当)に任ぜられ、1616年から外科と解剖学の講義と実習を受け持った。多くの冷血動物や温血動物の生体解剖によって、心臓の動きや弁膜の機能の解剖生理学的研究を行い、大循環、小循環を明らかにした。1628年に名著『動物における心臓と血液の運動に関する解剖学的研究』Exercitatio anatomica de motu cordis et sanguinis in animalibus(四つ折判72ページの小冊子)を、フランクフルト・アム・マインで出版した。
ハーベーの血液循環説は実験と計数を基にした申し分ないものだったが、それでも賛否両論が巻き起こった。とくにパリ大学の学長で解剖学者のリオランJean Riolan Jr.(1580―1657)は反対の先鋒(せんぽう)にたった。しかし、デカルト、ブラウンThomas Browne、グリソンFrancis Glisson(1597―1677)、シルビウスらの賛成を得て、ハーベーの学説は従来のガレノスの説を完全に覆し、近代生理学の基盤となった。ジェームズ1世、チャールズ1世の侍医を務め、王の信頼を得て、上位常勤侍医として、ホワイトホールに住み、ピューリタン革命で王が処刑されるまで、その職にあった。晩年は胎生学の研究に没頭し、1651年『動物の発生について』を出版し、「すべての動物の発生は卵から」を主張した。痛風に悩んだが、1657年脳出血で80年の生涯を閉じた。
[古川 明]
『阿知波五郎著『血液は循環する――ハーベイ伝』(1976・国土社)』
イギリスの医者。イギリス南部の港町フォークストンに豊かな商人の子として生まれた。ケンブリッジ大学のゴンビル・キーズ・カレッジを1597年に卒業したのち,パドバ大学に留学して医学を修めた。1602年に医学と哲学の学位をとり,帰国後ケンブリッジ大学でも学位を受けた。ロンドンで開業しながら,医師カレッジCollege of Physiciansの講師を兼ね,09年にはセント・バーソロミュー病院の医員に採用された。15年に王立内科医カレッジのラムリー講座の講師Lamleian lecturer(教授相当)に任ぜられ,16年4月から外科と解剖学の講義や実習をはじめた。彼は多数の冷血動物や温血動物の生体解剖によって,心臓の動きや弁膜の機能の解剖生理学的研究を行い,血液の循環,大循環,小循環を明らかにした。28年にハーベーは不朽の名著《動物における心臓の運動に関する解剖学的研究Exercitatio anatomica de motu cordis et sanguinis in animalibus》,略して《心臓の運動De motu cordis》(邦訳《血液循環の原理》)四つ折判72ページの小冊子を,フランクフルト・アム・マインで出版した。
ハーベーの学説は実験と計数をもとにした,申し分ないものだったが,それでも賛否両論がまき起こった。とくにパリ大学学長で解剖学者のJ.リオランは反対の先鋒に立った。しかし,R.デカルト,T.ブラウン,グリソンFrancis Glisson,F.シルビウスらの賛成を得て,ハーベーの血液循環説は,ガレノスの説を完全に覆し,近代生理学の基盤となった。彼は1618年にジェームズ1世の侍医,29年にチャールズ1世の侍医になった。王の信頼を受けて,39年には上位常勤侍医としてホワイトホールに住み,革命で王が処刑されるまでその職にあった。晩年は発生学の研究に没頭し,51年に《動物の発生に関する研究Exercitationes de generatione Animalium》を出版し,〈すべての動物の発生は卵からomne animal ex ovo〉という考えを主張した。晩年は痛風に悩み,57年6月3日脳出血のためロンドンで79年の生涯を閉じた。
執筆者:古川 明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…(2)の型は農耕民に多いが,採集狩猟民にもある。ポリネシアのハーベー諸島の神話は,太陽と月はもともと1人の子どもだったが,両親により二つに切断されて天に昇ったものという。(3)の型は世界の古代文明地帯とその影響圏に多い。…
※「ハーベー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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