人工的につくられたゲレンデではなく、自然のままの雪山などを滑るスキー。新雪の上を歩くように滑降しながら、雪原や林の中を滑り抜けるという、バックカントリーならではの楽しみがある。英語のバックカントリーは未開地や田舎(いなか)を意味する。スノーボードの場合はバックカントリースノーボードとよばれる。日本では山スキーや山岳スキーとよばれ親しまれてきた。北海道の大雪(たいせつ)山系やニセコ連峰、東北の八甲田(はっこうだ)山系、長野県白馬(しろうま)山系などをはじめ、日本各地に山スキーの名所として知られる場所がある。
バックカントリースキーの用具には、新雪でも埋もれにくい幅広のスキー板や、クロスカントリースキーのように山中を横断的に歩くことが考慮された専用のスキー用具がある。それらはおもにアルペンスキーとテレマークスキーに大別できるが、いずれも、登るときはスキー板の滑走面にシール(クライミングスキン)とよばれる、毛羽の逆毛を利用した、斜面を滑り落ちにくくする布のカバーを用いる。それぞれに足部の固定方法とスキーの幅が異なり、アルペンスキーはゲレンデスキーか、それをやや幅広にしたもので、登るときにかかとだけを解放できるビンディング(金具)が用いられる。一方、テレマークスキーはスキー板が細く、足はつま先部分だけが固定されるビンディングになっている。そのため、板が軽く、スキーを担いだり、スキーを履いて歩いたりすることは楽にできるが、急な斜面の登りや滑走はむずかしい。
バックカントリースキーを楽しむためには、このようなスキー用具で滑走する技術のほか、冬山の厳しい自然環境に対する十分な知識と準備が必要である。天候悪化や雪崩(なだれ)に遭遇した場合を考慮して、冬山登山の一般的な装備に加え、雪崩ビーコン、ショベル、雪に埋もれた人を探すためのゾンデ棒が必携である。
2007年(平成19)ごろからスキー用具の改良が進み、新雪の雪山を滑りやすい製品が増えたことなどを背景に、バックカントリースキーの人気が高まっている。インターネットの口コミなどで、スキーに適した日本の雪質が有名になり、海外から訪れるスキーヤーも年々増加している。これに伴い、スキー場から気軽にコース外へ出て、雪崩、道迷い、滑落などの事故に遭うケースが多発している。警察庁によると、2011年から2013年までの3年間における遭難者は合計174人。そのうち死者は34人。雪山の事故だけに死亡率が高い。また、死者のうち21人は雪崩が原因で亡くなっている。とくに2013年は死者が20人と急増した。各地の県警やスキー場では、パトロールや登山届提出の徹底、入山禁止区域を明示した地図の作成などの対策を強化している。
[編集部]
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