改訂新版 世界大百科事典 「パッサルゲ」の意味・わかりやすい解説
パッサルゲ
Siegfried Passarge
生没年:1867-1958
ドイツの地理学者。ケーニヒスベルク(現,ロシアのカリーニングラード)生れ。F.vonリヒトホーフェンに地理学を学ぶとともに,地質学と医学を修め,医師国家試験に合格後,北カメルーン,南アフリカ,ベネズエラ,オリノコ川流域,ギアナなどの実地調査を行った。ブレスラウ(現,ブロツワフ),ハンブルク両大学で地理学講座を担当。観察と帰納法に基づく研究を重視し,W.M.デービスの地形理論を批判する一方,地理学における術語の厳密化をはかり,地表の体系的把握のために景観の類型化に関心をもつ。イギリスのハーバートソンA.J.Herbertson(1865-1915)の影響をうけて,《景観学の基礎》(1919-20),《比較景観学》(1921-24),《世界の都市景観》(1934)などを公刊。景観は景観部分の集合としての部分景観からなり,それらが景観群,景観帯へと構成されると考えた。類型化の指標は自然を主とするものであったが,文化や歴史との諸関係も無視されてはいない。20世紀前半の地理学史上,その類型学の意義は高く,アメリカではC.O.サウアーの景観形態学への影響が大きい。
執筆者:水津 一朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報