日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒッチングス」の意味・わかりやすい解説
ヒッチングス
ひっちんぐす
George Herbert Hitchings
(1905―1998)
アメリカの薬理学者。ワシントン州ホークウィアムに生まれる。ワシントン大学で化学を学び、1927年に卒業、ハーバード大学医学部に進学し、1933年生化学博士号を取得した。同大学およびウェスタン・リザーブ大学(現、ケース・ウェスタン・リザーブ大学)での教職を経て、1942年にウェルカム研究所に入所、1967年からは副所長となり、1976年退職して名誉研究員となった。なお、1971年にはウェルカム財団の会長に就任した。
1942年から細胞代謝におけるプリン化合物の役割について研究を開始した。1944年からG・B・エリオンが研究に参加し、1951年に彼らはプリン誘導体である6‐メルカプトプリン(6MP:6-Mercaptopurine)の合成に成功し、この物質がDNAの合成を抑制する働きのあることを発見した。6MPやそれを改良したイムランは癌(がん)、とくに白血病の治療薬として用いられている。さらに、痛風の治療薬アロプリノールをはじめ、多くの新薬を開発した。ヒッチングスの新薬開発法は、従来の偶然に頼り、試行錯誤を繰り返す方法とは異なり、生命活動に重要な物質を生化学的に研究し、方針を立てて薬物を設計していくものであった。この開発法は高く評価され、1988年に「薬物療法における重要な原理を発見」した功績により、エリオンおよびイギリスの薬理学者J・W・ブラックとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。
[編集部]