日本大百科全書(ニッポニカ) 「エリオン」の意味・わかりやすい解説
エリオン
えりおん
Gertrude Belle Elion
(1918―1999)
アメリカの生化学者、薬理学者。歯科医の長女としてニューヨークに生まれる。ハンター大学で生化学を学び、1937年に卒業、高等学校の教師や民間会社の研究助手を務めるかたわら、ニューヨーク大学に通い、1941年修士号を取得した。食品会社などの研究室勤務を経て、1944年ウェルカム研究所に入り、1983年に退職して名誉研究員になるまで在籍した。
ウェルカム研究所においてヒッチングスの助手を務め、のちに共同研究者となった。そのころの新薬開発は、おもに天然物から成分を抽出し、そのなかから治療に有効と思われるものを探しだすものであった。彼らは、正常な細胞と病気におかされた細胞を生化学的に比較し、それをふまえて、病原菌や癌(がん)細胞の増殖を抑える薬を開発する手法をみいだし、白血病の治療薬イムラン、痛風の治療薬アロプリノールなどを開発した。1988年に「薬物療法における重要な原理を発見」した功績によりノーベル医学生理学賞を、ヒッチングスおよびイギリスの薬理学者J・W・ブラックとともに受賞した。
[編集部]
『シャロン・バーチュ・マグレイン著、中村桂子監訳『お母さん、ノーベル賞をもらう――科学を愛した14人の素敵な生き方』(1996・工作舎)』