日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒマラヤ造山帯」の意味・わかりやすい解説
ヒマラヤ造山帯
ひまらやぞうざんたい
Himalayan orogenic belt
ヒマラヤ地域における新生代古第三紀~現在に至る新しい造山帯。広義にはアルプス造山帯の東方延長部にあたり、アルプス造山帯とあわせてアルプス‐ヒマラヤ造山帯とよぶこともある。ローラシア大陸とゴンドワナ大陸の間に存在したテチス海に堆積(たいせき)した古生代カンブリア紀~新生代古第三紀始新世の堆積物が激しく褶曲(しゅうきょく)や変成を受けており、主境界衝上(しょうじょう)断層Main boundary thrust、主中央衝上断層Main central thrustなどの、北に傾斜した大規模な低角衝上断層が発達している。中軸部には新生代後期の花崗(かこう)岩体も存在する。ヒマラヤ造山帯は約4000万年前の古第三紀始新世に、ユーラシアプレートの大陸塊とインド・オーストラリアプレートのインド亜大陸塊が衝突してできたもので、インド亜大陸は現在も北上し続けている。衝突合体した所がインダス‐ツァンポ縫合帯とよばれるオフィオライト帯である。この衝突により、チベット高原の約70キロメートルに及ぶ異常に厚い大陸地殻と世界の屋根といわれるヒマラヤ山脈が形成された。
地殻が厚いのはユーラシアとインドの地殻が重なっているため、という意見もあるが、実際には上部地殻のみが重なっていて、それといくつかの衝上断層の影響もあって厚化していると考えられている。なお、世界最高峰のエベレスト山頂付近には、海成の石灰岩が分布することが知られている。
[岩松 暉・村田明広]