造山運動を受けたか、または受けつつある地帯。著しく褶曲(しゅうきょく)したり、衝上(しょうじょう)断層で切られた地層、花崗(かこう)岩または安山岩、変成岩などが分布し、長さ1000キロメートル以上の細長い地帯をなす。大きい地質図についてみると、たとえば朝鮮半島や中国北部では地層分布が単調であるのに対して、日本列島では地層や岩石の分布が非常に複雑であり、またそこでは現在の火山、地震活動も著しい。これは日本列島が過去および現在、造山帯であることを示す。太平洋の周りには、日本列島のような造山帯が集まってより大きい造山帯ができていて、これは環太平洋造山帯とよばれる。同様な大きいスケールのものにアルプス‐ヒマラヤ造山帯がある。
造山帯の位置は時代によって異なる。ヨーロッパで古生代前期、古生代後期、中生代から新生代に、それぞれ位置を変えてカレドニア造山帯、バリスカン造山帯(ヘルシニア造山帯)、アルプス造山帯があった。しかし、カレドニア、バリスカン造山帯は北アメリカ東部では合体してアパラチア造山帯となっている。日本列島のうち本州弧は古生代シルル紀以降(約4億年前)造山帯であったが、造山運動の中心部の位置は時代とともに変わっている。
造山帯には、大陸と大陸が衝突して、その間の海洋に堆積(たいせき)していた地層が変形を受けたものや、海洋プレートの沈み込みによって海溝に堆積した地層や遠洋性のチャートなどが付加したり、大陸プレート側で火成活動がおこったりして形成されたものなどがある。
[木村敏雄・村田明広]
過去に造山運動を経験した地域,および現在造山運動が進行中であると考えられる地域。変動帯,造構帯などの言葉も,ほとんど同じ意味に用いられる。造山帯は幅数百km,長さ数千km程度の規模のものが多く,細長い帯状の地域であって,弧状に湾曲したり,かなり強く屈曲したりしているものもある。古生代以後の造山帯の分布をみると,先カンブリア時代の変動で安定化した大陸地塊の周囲に,外側に向かって順次時代が新しくなっていくように配列していることが多い。
造山帯の構造は,アルプスやアパラチアなどの造山帯の研究から得られた断面を模式化して描かれてきたが,中軸部に深成帯,変成帯があって花コウ岩,混成岩,片麻岩,結晶片岩などが分布し,その外側には造山帯の前身である地向斜に形成された種々な堆積岩類が分布する。これらは低角衝上断層やナップを伴う強く変形した褶曲帯,衝上帯をつくっている。さらに外側では,変形がしだいに弱まって非変成地域に移り変わっていく。このような配列は,造山帯によって中軸部の両側に対称的な構造をつくっていることもあり,非対称な場合もある。
古生代以後の世界の造山帯は,カレドニア,バリスカン,アルプスの三つに大きく区分され,それぞれがさらに地域的に細分されている。日本の造山帯は,このような大区分に対比すると,一部がバリスカンとされるが,大部分はアルプスで,カレドニアに当たるものは明らかではなく,そのころの時代を示す年齢の岩石が若干認められているにすぎない。
1960年代に始まったプレートテクトニクスによると,造山帯というものは,相対的に接近していくプレートどうしの境界部に形成されるものである。基本的には大陸プレートどうしの衝突によるヒマラヤのようなタイプと,大陸プレートの下方への海洋プレートのサブダクション(沈み込み)によるアンデスのようなタイプとがある。後者の場合,まれには大陸プレート上への海洋プレートのオブダクション(乗上げ)というタイプもあり,複雑な場合として,大陸プレートの外縁に縁海と弧状列島とを伴うものと海洋プレートとの接近(オーストラリア・サンゴ海・ニューヘブリデス~ソロモン諸島と太平洋など),さらにこの縁海に海洋プレートが発達するもの(アジア・日本海・日本列島と太平洋など)が区分される。これらのようにプレートどうしが接近していってぶつかる場所を,プレートの収束性境界と呼ぶが,結局プレートテクトニクスによると,造山帯には,プレートの収束性境界の性格に応じていくつかの異なるタイプのものがあり,このことによってこれまでに知られている造山帯の重要な諸特徴が説明される。
執筆者:植村 武
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