ヒートパイプ(読み)ひーとぱいぷ(英語表記)heat pipe

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒートパイプ」の意味・わかりやすい解説

ヒートパイプ
heat pipe

密閉された容器 (パイプ) 内にウィックと呼ばれる多孔質材などを内張りし,液体を封入したもので,動力を必要とせず熱量輸送のできる伝熱装置である。ヒートパイプ一端を加熱し,他端を冷却すれば,加熱部で内部の液体が蒸発して蒸気となり冷却部へと流動し,ここで冷却されて凝縮熱を放出して凝縮する。凝縮した液は,ウィックの毛細管作用により加熱部へと返送され,連続的に熱量が輸送され,条件によっては銅の 100倍程度の実効熱伝導率が得られる。 1964年に人工衛星の熱電子発電装置に初めて用いられて以来,電子機器の冷却や,料理用機器,医療用凍結装置,産業用熱交換器など広く用いられている。ウィック材には,焼結合金,金網,発泡メタルなどが用いられ,作動液体には,使用温度に応じてフロン系冷媒,水,水銀ナトリウム,銀などが使用される。液体の帰還方法は,毛細管力によるものが普通であるが,回転式ヒートパイプでは遠心力が利用され,また重力を利用したものも広義にはヒートパイプと呼ばれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒートパイプ」の意味・わかりやすい解説

ヒートパイプ
ひーとぱいぷ
heat pipe

熱を効率よく大量に伝える装置。1942年アメリカのゼネラル・モーターズ社で開発された。両端を閉じて内部を排気し、壁面に多孔質物質をつけた中空パイプで、内部に水やメタノールメチルアルコール)、アセトン、ナトリウム、水銀などを入れてある。パイプの一端を高温に保ち、他の一方を低温に保つと、高温部で管内の流体が蒸発し大量の熱をもつ蒸気になり、管内の中空部を流れて低温部に移動する。低温部で蒸気が凝縮し、大量の熱を放出する。熱を捨てた液体は管壁の多孔質部分を通り高温部に戻る。液体の温度変化に加え、蒸発、凝縮の潜熱による熱の移動をおこし、温度差に比較して大量の熱を伝えることができる。パイプには銅、ステンレスセラミックスなどが使われる。

[吉田正武]


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