液化(読み)エキカ(英語表記)liquefaction

翻訳|liquefaction

デジタル大辞泉 「液化」の意味・読み・例文・類語

えき‐か〔‐クワ〕【液化】

[名](スル)気体が液体の状態に変化すること。また、変化させること。
[類語]気化固化昇華

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精選版 日本国語大辞典 「液化」の意味・読み・例文・類語

えき‐か‥クヮ【液化】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 気体が、冷却されたり圧力を加えられたりして、液体になること。また、気体を液体にすること。凝縮。〔医語類聚(1872)〕
  3. 固体が溶けて液体になること。また、固体を液体にすること。融解

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改訂新版 世界大百科事典 「液化」の意味・わかりやすい解説

液化 (えきか)
liquefaction

物質が気体から液体に変化する現象。固体から液体への変化を含めることもあるが,こちらは通常融解という。気体の温度を一定に保って圧縮すると気体の圧力と密度が増し,ある圧力のところで気体の一部が液化し始めるが,全部が液化するまで圧力は一定に保たれ,全体の密度だけが増す。ただし圧縮によって液化が起こるのは臨界温度以下の場合で,臨界温度以上の気体はどんなに大きな圧力を加えても液化しない。圧縮するかわりに,一定の圧力下で温度を下げていく場合にも液化が起こり,そのときの温度は沸点に等しい。気体から液体への変化は一次相転移であり,密度は不連続に変化する。しかし固体との違いに比べ,気体と液体との違いは小さく,臨界点を迂回するように圧力と温度を変化させると,連続的変化の積重ねで気体を液体にすることができる。身近な液化の例としては,雲や霧の発生や冬の窓ガラス上の結露などがある。これらは,水蒸気を含む空気が冷却されることによって水蒸気の液化が起こるものである(凝結)。

 気体を人工的に液化しようという試みは,19世紀初めのM.ファラデーらによる塩素,炭酸ガス,アンモニアなどの気体の液化に始まるが,初期には,臨界温度の存在が知られていなかったので,酸素や水素などある種の気体は,液化不能であると考えられていた。しかし,1869年にイギリスのT.アンドルーズが炭酸ガスについて臨界温度の存在を発見してからは,すべての気体が液化可能であることがわかり,最後まで残ったヘリウムも1908年にオランダの物理学者カメルリン・オンネスによって液化された。

 液化は,分子間に相互作用があるために起こる。相互作用のない分子の集りである仮想的な理想気体では液化は存在しえない。J.D.ファン・デル・ワールスによって半ば経験的に提唱された状態方程式(ファン・デル・ワールスの状態方程式)は,気体の圧力をP,モル当りの体積をV気体定数R,絶対温度をTとすると,(Pa/V2)(Vb)=RTと書かれ,気体から液体への連続的な転移を記述できる。パラメーターabは気体の分子間力によって定まる定数で,bは分子の大きさが有限で圧縮に限度があるという効果を表し,aは分子間の距離が適当な大きさであるときに引力が働く効果を表している。

 前述のように,臨界温度が常温より低い気体は圧縮のみでは液化は不可能である。液化するためにはなんらかの方法でその気体を臨界温度以下に冷却してから圧縮しなければならず,臨界温度がとくに低い空気,酸素,窒素,水素,ヘリウムなどは,あらかじめある温度まで冷却してから断熱膨張による温度低下を利用して液化させる。

 一般に用いられている液化装置は,圧縮気体を断熱的に,すなわち外界と熱の出入りがないようにして,膨張させると温度が低下するというジュール=トムソン効果を利用するもので,これとあらかじめ気体を冷却する予備冷却を組み合わせている。円筒内で断熱膨張によって冷却された圧縮気体を,次々に流入してくる気体の予冷に用いるクロード液化法,それを改良したクロード=ハイランド液化法,また,気体を断熱膨張させたあと熱交換器を通して圧縮機の中に戻して冷却するハンプソン=リンデの液化法などが代表的なものである。

 なお,気体の液化に関しては〈液体空気〉〈液体ヘリウム〉〈臨界状態〉,また低温を得る方法に関しては〈極低温〉の項目も参照されたい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「液化」の意味・わかりやすい解説

液化
えきか
liquefaction

気体が凝縮して液体になることをいう。また固体が溶けて液体になることをもいうことがあるが、これは融解ということのほうが多い。通常は前者をさす。また、室温付近で凝縮して液体になる場合(たとえば水蒸気の凝縮)よりは、加圧により気体が液体になる場合をさすことが多い。一般に、どんな気体でも、その気体に特有の臨界温度以下に冷却してから加圧すれば液化できる。たとえば、プロパンは臨界温度が96.8℃であるから、室温でも圧縮すれば液化する。しかし、酸素や窒素は臨界温度がそれぞれ零下118℃、零下147℃であるから、常温でいくら圧縮しても液化しない。このような気体を永久気体とよんだことがある。臨界温度以下に冷却するには、ジュール‐トムソン効果(ジュールの実験)や断熱膨張などを利用する。液化した気体は容積が小さく、また低温であることが多いので、輸送や保存あるいは低温用冷却剤として便利である。保存用としては、プロパン、ブタンなどがあり、低温用冷却剤としては、液体空気(沸点零下約190℃)、液体水素(沸点零下約252℃)、液体ヘリウム(沸点零下268℃)などがある。液体ヘリウムは、超伝導磁石、ジョセフソン素子(大型計算機用素子として注目されている)の動作に欠かせない冷媒である。

[戸田源治郎・中原勝儼]

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百科事典マイペディア 「液化」の意味・わかりやすい解説

液化【えきか】

気体を液体にすること。常温で液体であるものの蒸気の液化は凝縮という。気体を液化するにはまず臨界温度以下に冷却してから圧縮することが必要。臨界温度が常温より高い気体(アンモニア,フロン,プロパンなど)は,圧縮しただけで液化される。臨界温度が常温より低く液化の困難な気体(空気,水素,ヘリウムなど)は永久気体と呼ばれた。液化気体は体積が小さいので保存運搬に適し,低温用冷媒として用いられる。→液体ヘリウム
→関連項目ジュール=トムソン効果臨界状態

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「液化」の意味・わかりやすい解説

液化
えきか
liquefaction

気体が圧縮されて液体に変る現象。常温で,アンモニア,フロン,プロパンなどは圧縮するだけで液化するが,酸素,水素,ヘリウムなどは圧縮するだけでは液化しない。これは各気体の臨界温度が常温より低いためである。したがって空気などの気体を液化するには,冷却してから圧縮しなければならない。固体が液体に変る現象を液化ということもある。 (→凝縮 )

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化学辞典 第2版 「液化」の解説

液化
エキカ
liquefaction

通常,気体が液体に変化することをいうが,固体が液体になることをいう場合もある.気体は冷却または加圧により液化するが,加圧のみによって液化するには,その温度が臨界温度以下でなければならない.この温度以上では加圧しても液化は起こらない.

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