ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒーニー」の意味・わかりやすい解説
ヒーニー
Heaney, Seamus
[没]2013.8.30. アイルランド,ダブリン
アイルランドの詩人。フルネーム Seamus Justin Heaney。カトリック教徒の農家の子として生まれ,1961年ベルファストのクイーンズ大学を卒業。中等学校の教壇に立ちつつ,母校のほかベルファストおよびダブリンの大学で講師を務めた。1979年ハーバード大学客員教授,1985年正教授。1989~94年オックスフォード大学教授を兼任。1966年の第一詩集『ナチュラリストの死』Death of a Naturalistと『闇黒に通じるドア』Door into the Dark(1969)では,伝統的なスタイルをかりて北アイルランド地方の暮らしや生物の生態を生き生きと描き,土地への愛着とことばへの信頼をうたった。『冬を切りぬける』Wintering Out(1972),『北』 North(1975)の頃から,神話や伝説に仮託しながら,北アイルランドにおける宗教対立や流血事件といった過酷な現実と,そこに生きる人間の苦悩を描き出している(→北アイルランド紛争)。その後の『野外調査』 Field Work(1979),『ステーション・アイランド』Station Island(1984),"The Haw Lantern"(1987),"Seeing Things"(1991)といった作品も,過去の幻想的な説話を通して,漂泊せざるをえない現代人の不安な運命を繊細でシンプルな語り口で語っている。ほかに,『水準器』The Spirit Level (1996,ウィットブレッド文学賞),『郊外線と環状線』District and Circle(2006,T.S.エリオット賞),『人間の鎖』Human Chain(2010),古英語で書かれた叙事詩を翻訳した『ベーオウルフ』Beowulf(1999,ウィットブレッド文学賞)などがある。詩や詩人に関する評論のほかエッセーも数多く著している。アイルランドの現在に生きる過去や神話を文学の位置に高めたことに対し,1995年ノーベル文学賞を授与された。
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