化学辞典 第2版 の解説
ビス(タルトラト)二アンチモン(Ⅲ)酸カリウム
ビスタルトラトニアンチモンサンカリウム
potassium bis(tartratodiantimonate(Ⅲ))
K2[Sb2(C4H2O6)2]・3H2O(667.87).IUPAC体系名はビス[D-μ-(2,3-ジヒドロキシブタンジオアート)]二アンチモン酸二カリウム三水和物dipotassium-bis[D-μ-(2,3-dihydroxydobutanedioato)]diantimonate.俗称を吐酒石(tartar emetic)という.酒石酸アンチモニルカリウムといわれることもあるが,原子団SbOが存在しないので誤称.酒石酸水素カリウムの水溶液に,酸化アンチモン(Ⅲ)を加えて煮沸し,KOHを加えて冷却すると結晶が得られる.無色の結晶.2個の酒石酸(タルトラト)が四座配位子として2個のSb原子と結合した架橋構造をもつ.密度2.6 g cm-3.水に可溶.空気中で風解する.130 ℃ で一水和物になり,235 ℃ 以上では分解する.水溶液にNaOHを加えると,加水分解してSb2O3を沈殿する.17世紀以来,医薬品(吐剤,駆虫剤,去たん剤)として用いられたが,Sbには人体に対する毒性がある.そのほか,農薬(殺虫剤),なめし皮や繊維の媒染剤,金属錯体の光学活性体の分割,分析試薬などに用いられる.化学物質排出把握管理促進法・第一種指定化学物質,毒物及び劇物取締法・劇物,労働安全衛生法・名称等を通知すべき危険物及び有害物指定,消防法・貯蔵等の届出を要する物質,薬事法・劇薬.[CAS 28300-74-5]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報