日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨウ素滴定」の意味・わかりやすい解説
ヨウ素滴定
ようそてきてい
iodometric titration
I2+e-2I-
ヨウ素の酸化作用はあまり強くなく、強い還元剤に対してのみ酸化剤として働きヨウ化物イオンを生じ、逆に強い酸化剤に対してはヨウ化物イオンが電子を放出してヨウ素を生じる。普通にヨウ素滴定というときは、ヨウ素の酸化力を利用する前者の場合(これをヨウ素酸化滴定、ヨーディメトリーiodimetryという)と、ヨウ化物イオンの還元力を利用する後者の場合(これをヨウ素滴定、ヨードメトリーiodometryという)に分けられる。
ヨウ素は昇華法で精製できるので一次標準物質となりうるが、無水亜ヒ酸(As2O3、一次標準物質)を用い、4<pH<9に保ってヨウ素標準溶液の標定を行うことがある。ヨードメトリーの場合、遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウムの標準溶液で滴定する。この方法は酸化力のある物質の定量に広く適用できる。
ヨウ素滴定においては、指示薬はデンプンを用いる。可溶性デンプン(主成分はα-アミロース)はI2と、よく知られたヨウ素デンプン反応をして濃い青紫色を呈する。したがってヨウ素滴定においては、溶液がわずかに青紫色を呈するところを終点とする。
[成澤芳男]