毒薬に次いで毒性や薬理作用の強い医薬品のことで、毒薬とともに「医薬品医療機器等法(旧、薬事法)」に取扱いなどが定められている。劇薬の指定は厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて行い(医薬品医療機器等法44条)、直接の容器または被包に、白地に赤枠、赤字をもって、その品名および「劇」の文字を記載することとなっている。また、業務上これらを取り扱う者はほかのものと区別して貯蔵または陳列しなければならないことや、薬局での販売については、その品名、数量、使用の目的、譲渡の年月日、譲渡人の住所・氏名・職業が記載され、署名または記名押印のある文書がなければ販売または授与してはならないこと、14歳未満の者、その他安全な取扱いをすることについて不安があると認められる者については交付してはならないことになっている。劇薬の品目については、医薬品医療機器等法施行規則の別表3に、亜硝酸アミル、アミノフィリン、インスリン注射液、インドメタシン、カフェイン、サントニンなどの医薬品が指定されている。
毒・劇薬の指定の根拠となる資料は、動物実験による急性毒性値(50%致死量)が中心となるが、そのほか慢性・亜急性毒性、安全域、副作用の発現率とその程度などから判定される。なお、医薬品および医薬部外品以外で毒性、劇性の強いものは、保健衛生上の見地から必要な取締りを行うため、「毒物及び劇物取締法」によってその取扱いなどが規制されている。
[幸保文治]
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薬事法にもとづき厚生大臣が指定する一群の医薬品。毒性が強く中毒量と常用量がきわめて接近しているもの,副作用の発現率が高いもの,常用量で激しい薬理作用を示すものなど,使用法を誤ると危険なものが指定される。同様の主旨で指定されるものに毒薬があるが,通常劇薬の毒性は毒薬の約1/10。おおむね50%致死量が1kgあたり300mg以下のものが劇薬に指定されている。直接の容器や包装には,白地に赤枠,赤字で品名と〈劇〉の文字を記載し,他の薬物と区別して貯蔵,陳列しなければならないことになっている。おもな劇薬には,アトロピン,アコニチン,ヒヨスチアミン,スコポラミン,ジギタリス,ニコチン,コルヒチンなどの生薬や動植物成分,およびその製剤,アクチノマイシンD,ゲンタマイシンなどの抗生物質,アセチルコリン,アンチピリン,バルビタール,フェノールフタレイン,塩酸,硫酸,硝酸などの化学製剤がある。
→薬用量
執筆者:松谷 剛志
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…薬事法に基づき厚生大臣が指定する薬物。医薬品のうち,毒性が強い,中毒量と常用量が接近している,副作用の発現率が高い,常用量で激しい薬理作用をもつなど,使用量を誤ると危険な薬物は毒薬あるいは劇薬に指定される。このうち,通常,劇薬よりも10倍以上毒性の強いものが毒薬に指定される。…
※「劇薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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