改訂新版 世界大百科事典 「ビラールドオヌクール」の意味・わかりやすい解説
ビラール・ド・オヌクール
Villard de Honnecourt
13世紀前半に活躍したフランスの建築家。生没年不詳。カンブレ近郊の小村オヌクール出身で,カンブレ大聖堂の工事に参加したと推定され,ハンガリーにまで招かれて聖堂を建てたといわれるが,確証はない。広く各地を巡歴して修業し,その注意をひいた建物,家具,彫刻,装飾,風俗などをスケッチブックに書きとめた。のちに簡単な説明文と実用的な建築用の幾何作図法,建設工事用機械,武器などの図をこれに加え,建築家をめざす後進のための教科書にまとめた。《アルバム》と呼ばれるこの本は約15cm×23cmの羊皮紙に書かれており,当初は54葉以上あったといわれるが,33葉がパリのビブリオテーク・ナシヨナルに保存されている。この本は中世の建築家の教育とその内容を伝える貴重な記録で,19世紀の発見以来,各国で研究されている。
執筆者:飯田 喜四郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報