改訂新版 世界大百科事典 「ビルアルドゥアン」の意味・わかりやすい解説
ビルアルドゥアン
Geoffroi de Villehardouin
生没年:1150?-1213?
フランスの騎士,歴史家。シャンパーニュのトロア市近郊のビルアルドゥアン城に生まれ,第4回十字軍(1201)に参加,フランス語散文の最初の記念碑とされる《コンスタンティノポリス攻略誌》(1207ころ)を著した。シャンパーニュ伯ティボー3世の命を受けて,彼はベネチア市と十字軍士をエルサレムまで運ぶ乗船契約の交渉をしたが,ティボー3世が急逝し,モンフェラート侯が代わって指揮する第4回十字軍は予定の人数に達せず契約金が払えなくなり,ベネチアの巧みな扇動でキリスト教徒の町コンスタンティノポリスを攻略,略奪を行ってしまった。この戦いの素朴な叙述である兵士ロベール・ド・クラリの《遠征記》が,キリスト教徒と闘ってしまった十字軍士の後ろめたさを語っているのに比べ,明快に経緯を述べるビルアルドゥアンの著作を巧みな自己弁護とみる説もある。写本の多くでは続編のアンリ・ド・バランシエンヌの書いた《アンリ・ド・コンスタンティノポリス帝史》と一体になっている。
執筆者:松原 秀一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報