戦史(読み)センシ(その他表記)Historiai

デジタル大辞泉 「戦史」の意味・読み・例文・類語

せん‐し【戦史】

戦争歴史。また、その記録

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精選版 日本国語大辞典 「戦史」の意味・読み・例文・類語

せん‐し【戦史】

  1. 〘 名詞 〙 戦争の歴史。戦争の記録。
    1. [初出の実例]「古ヘスパルタ人がペルシヤ人をテルモビールに撃退したる事蹟は〈略〉我が湊川の碑文と共に世界の戦史に於ける三大事蹟たり」(出典:毎日新聞‐明治三七年(1904)六月一六日)

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改訂新版 世界大百科事典 「戦史」の意味・わかりやすい解説

戦史 (せんし)
Historiai

トゥキュディデスが,アテナイと,スパルタを中心とする反アテナイ陣営のポリスとの間で戦われた,いわゆるペロポネソス戦争(前431-前404)をつづった歴史記述。自身の目前でおこなわれた大事件の記録をみずから取り,かつひとつの全体に構成していった,言葉の本来の意味における同時代史である。8巻から成り,開戦に至るポリス間の交渉から,前411年の途中までが描かれており,未完叙述する事件をかなり厳格な編年体という枠の中で構成したこと,情報収集に対する態度,行為の因果関係を見つめる鋭い視線などから,近代的な意味での歴史記述としての評価もきわめて高いが,《戦史》の価値はこれに尽きるものではない。彼の文体,戦争行為をみつめる態度,叙述を組み立ててゆく方法には,ソフィスト,ヒッポクラテス派医学,アッティカ悲劇などの影響がかなり顕著にみられることは,つとに指摘されてきたことである。《戦史》は,これら古典期ギリシアの知的産物を高度に身につけたひとつの知性が,文化的発展を支えてきた力そのものの,力の論理それ自体による崩壊の場面に直面し,おのが知性のすべてを挙げてその事態の真の姿の究明に努めた記録でもある。古来名高い彼の文章の難解さ,異様さは,おそらくこの知性が置かれた場所の特異さに由来している。また,《戦史》の要所に置かれた直説話法による演説,とくにペリクレスヘルモクラテスのそれは,古代ギリシアの政治的知性の頂点を表現したものでもある。
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百科事典マイペディア 「戦史」の意味・わかりやすい解説

戦史【せんし】

トゥキュディデスの著書。《Historiai》。《歴史》とも訳。自ら従軍したペロポネソス戦争史実を記述したもの。8巻。前431年開戦と同時に書き始め,亡命中も執筆を続けたが,前411年のところで未完に終わった。文章は荘重で,公平厳密な史料批判を行いつつ詳細に経過を記述。古典期ギリシアの高度な知性による,人間そのものを捉えようとした歴史学として注目される。
→関連項目トゥキュディデス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「戦史」の意味・わかりやすい解説

戦史
せんし
Historiai

ギリシアの歴史家ツキジデス史書。8巻。ペロポネソス戦争をその発端 (前 431) から前 411年まで描き,未完に終っている。著者は戦争の開始と同時にこの事件の重大な意味を悟って,初めから史書を書くつもりでメモを取り,途中でアテネを追放になってからは,各地を旅行して,両陣営からできるだけ客観的な情報を集めた。濃縮された鮮明な文体,公平で科学的な態度によって,古今の史書のなかでも最高傑作の1つに数えられている。

戦史
せんし

戦争の歴史,あるいは特定の戦争の記録。各国とも戦争が終わってから軍機関が戦争の記録を編纂するのが通例となっている。日本では日中戦争,第2次世界大戦について,1966~1980年防衛庁防衛研究所戦史部が『戦史叢書』を編纂。 (→戦記 )

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世界大百科事典(旧版)内の戦史の言及

【プロコピウス[カエサレアの]】より

…晩年や没年については不詳。主著《戦史(歴史)》8巻は553年までの東ローマ帝国の戦役を伝えるもので,ベリサリオスへの肩入れは否めないにせよ,プロコピウスは客観的記述を心がけており,当時の軍事・外交史を知るうえで第一級の史料である。これに対し,彼の作とされる《秘史》(550ころ)はユスティニアヌス帝に対する悪意に満ちた攻撃文で,事実関係を知るうえでは信頼できないが,当時の宮廷社会をかいま見せて興味深い。…

【トゥキュディデス】より

…古代ギリシアの代表的歴史家の一人。ペロポネソス戦争を扱った未完の史書《戦史》の著者。オロロスを父としてアテナイの権門に生まれる。…

【農事暦】より

…古代ギリシアにおける農事暦的な基礎知識は一般市民の共有財であると同時に,ヒッポクラテスなどの医学者が風土病や季節ごとの変り目に生ずる疾患を扱う場合にも重要な資料となっている。また前5世紀末の歴史家トゥキュディデスの編年体(《戦史》)の準拠する四季の巡回も,春の穀物生育過程(〈麦の穂の熟れたころ〉のように)によっているが,これは戦争もまた農事暦を顧みて実行されていたことを告げている。 初期のローマにも農事暦が存在していたことは,大カトー(前2世紀)の《農業論》の随所にうかがわれる。…

※「戦史」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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