改訂新版 世界大百科事典 「ピュグマリオン」の意味・わかりやすい解説
ピュグマリオン
Pygmaliōn
ギリシア伝説の人物で,同名2人が知られている。(1)キプロス島の王。みずからの手でつくった象牙の乙女像に恋し,これに似た女性が妻に授かるようにと女神アフロディテに祈ったところ,女神は像に生命を吹きこんだので,生身の人間となった彼女をめとり,1子パフォスPaphosを得たという。オウィディウスの《転身物語》でよく知られるこの話は,新しくはG.B.ショーの喜劇《ピグマリオン》(1913)に翻案され,次いでそれを原作としてミュージカル《マイ・フェア・レディ》が上演された。なお,ピュグマリオンの妃となった女性をガラテアGalateaの名で呼ぶことがあるが,古代の伝承にはない名である。(2)フェニキアのテュロス王。妹ディドの夫シュカイオスSychaiosを,その巨富を奪うべく殺害した。このためにディドが祖国を逃れ,カルタゴを建設して女王となった経緯は,ウェルギリウスの叙事詩《アエネーイス》に詳しい。
執筆者:水谷 智洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報