ピラミッドテキスト(その他表記)Pyramid texts

改訂新版 世界大百科事典 「ピラミッドテキスト」の意味・わかりやすい解説

ピラミッド・テキスト
Pyramid texts

古代エジプトの葬礼文書の一つ。故王の復活と永生を助けるため,葬儀供養儀式の際に誦された呪文の集成で,古王国末期のピラミッド(第5王朝のウナス,第6王朝のペピ1世,メルエンラー1世,ペピ2世,第8王朝のイビ,およびペピ2世の3人の王妃のもの)の墓室壁面に刻まれたのでこの名がある。統一されたテキストがあるわけでなく,ピラミッドごとに用いられる呪文に異同がある。現在,ドイツのエジプト学者ゼーテKurt Sethe(1869-1934)の集成により759章が知られている。文字は青色顔料で埋められ,人や動物など故王に危害を及ぼす可能性のある文字は一部分を削除して用いている。文字体系としてはまだ完全ではない古エジプト語で記され,呪文が誦せられる儀式の詳細も不明なため解釈困難な呪文も多い。先史時代にさかのぼるとみられる呪文もあるが,大部分は古王国時代の葬祭慣行を反映している。故王の運命についても統一ある来世観はなく,太陽神のもとへの昇天,星への仲間入り,オシリスへの変容などが混在している。呪文の多くは第1中間期の〈葬祭の民主化〉によって一般人にも使用可能となり,中王国時代の〈コフィン・テキスト(棺柩文)〉,新王国時代の〈死者の書〉に借用されている。
ピラミッド
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のピラミッドテキストの言及

【ピラミッド】より

… 第5王朝以降ピラミッドの規模は縮小したままで(底辺の平均の長さ約80m)石積み技術も低下する。ただ葬祭殿はいっそう重視され,構造の整備,多様な浮彫や植物柱の使用が進み,第5王朝末からは無銘であった墓室にも〈ピラミッド・テキスト〉や偽扉が刻まれるようになる。第12王朝のピラミッドは底辺の平均的長さ約100m,切石や日乾煉瓦の骨組みの間を割石または砂礫で埋め,切石で外装した。…

※「ピラミッドテキスト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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