フィッシャルト(その他表記)Johann Fischart

改訂新版 世界大百科事典 「フィッシャルト」の意味・わかりやすい解説

フィッシャルト
Johann Fischart
生没年:1546-90

ドイツの人文主義作家。独創的構想より,風刺パロディと一体化した奔放なマニエリスム的表現の豊かさで当代無比を誇った。シュトラスブルク(現,ストラスブール)に生まれ,作品の大半も同地で書かれたが,青年時代はパリやシエナ,イギリスやオランダなど各地を遍歴,また晩年ザール地方のフォルバハという小都で法務官として日を送った。代表作ガルガンチュア戯史》(1575)はラブレーの原作を約3倍に増幅・翻案したもの。ほかに《韻文オイレンシュピーゲル》(1572),《のみと女》(1573),《チューリヒの幸多き船》(1576),《婚姻訓》(1578)など。カルバン派に属し,その姓フィッシャルトは父の姓フィッシャーをあえてオランダ風にしたものとされる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィッシャルト」の意味・わかりやすい解説

フィッシャルト
Fischart, Johann

[生]1546. シュトラスブルク
[没]1590. フォルバック
ドイツの作家。 16世紀ドイツ最大の大衆的な風刺作家で,プロテスタント側に立つ論客としても知られる。イタリア,オランダ,イギリスを遍歴。バーゼル大学学位を得,弁護士,官吏などもつとめた。かたわら人文主義的教養,言語的才能を駆使した道徳的な風刺作品を発表,論難書で教皇,イエズス会を攻撃した。代表作はラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエル』を翻案した『奇想天外記』 Affentheuerlich Naupengeheuerliche Geschichtsschrift (1575) ,風刺書『チューリヒの幸運の船』 Das glückhafft Schiff von Zürich (76) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィッシャルト」の意味・わかりやすい解説

フィッシャルト
ふぃっしゃると
Johann Fischart
(1546―1590)

ドイツの地方司法官で風刺作家。シュトラスブルク生まれ。人文主義的教養と通俗語源学を武器に、カルバン派の立場から時代の悪弊を批判した。独創的な作品は乏しいが、自由奔放な翻訳改作によってドイツ語表現力の可能性を高めた。代表作はラブレーの『ガルガンチュワ』に拠(よ)った『奇想天外の書』(1575)、堅実で勤勉な市民精神をたたえた『チューリヒの幸福な船』(1576)など。

[尾崎盛景]

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