改訂新版 世界大百科事典 「フウキンチョウ」の意味・わかりやすい解説
フウキンチョウ (風琴鳥)
tanager
スズメ目ホオジロ科フウキンチョウ亜科Thraupinaeの鳥の総称。全長は9~25cm。スズメより小さいものからムクドリ大の鳥まで236種を含む大きいグループである。種数の多いわりにはどれもよく似たものが多く,色彩は別として,あまり多様化していない。くちばしは短く分厚いが,ホオジロ科の中では比較的細長く,ホオジロ科の他の亜科とは食性が異なることを示している。ほとんどは雌雄異色で,雌はいくらか鈍い色をしている。雄は赤色,黄色,緑色などカラフルなため,ときどき飼鳥として輸入される。
ゴクラクフウキンチョウTangara chilensisは雌雄同色で,黒色,赤色,オレンジ色,黄色,緑色,青色,紫色に彩られ,もっともはでな色彩をしている鳥の一つ。フウキンチョウの類は南北アメリカに分布しているが,とくに南アメリカの熱帯域に多くの種が見られる。いろいろな森林にすみ,樹木の小枝や葉の多い樹冠部や森縁部など葉の多いところを好み,ホオジロ科の他の亜科のものが穀物などの種子食であるのに対して,昆虫や小果実,ヤドリギの果実などを食べる。北アメリカ西部にふつうのニシフウキンチョウPiranga ludovicianaは雄は頭部が赤色で体が黄色く,森林にすみ,北アメリカ東部にふつうのアカフウキンチョウP.olivaceaは雄は紅赤色で広葉樹林や混合林にすんでいる。
執筆者:中村 登流
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報