アングロ・サクソンの国の大学での構成員資格や,特定の種類の奨学金を示す言葉。イギリスとアメリカ合衆国で等しく大学院生・若手研究者向けの奨学金制度を意味する場合があるが,中世以来,自治団体(universitas)の伝統を保持してきたイギリスのオックスブリッジでは,特徴的には大学という団体構成員資格と同意義で,教員もフェローの間から任用されてきた。対して,当初から外部組織に管理され,自治団体の性格が弱かったアメリカの大学では,教員は団体への加入者というより,被雇用者(雇われ教師)であった。その結果,フェローシップはとくに優秀な大学院生への給付奨学金の制度の意味が強まった。博士号を取得した研究員(ポストドクター)の制度も短期の契約であり,教授団への参入というよりは,高度な研究補助活動への対価としての奨学金の色彩が強い。
著者: 立川明
[イギリス]
イギリスのフェローシップカレッジや大学のシニア・メンバーの地位。主として上級学位の取得を目指し勉学する貧困学徒が食事や礼拝を共にする共同体がカレッジ(イギリス)であるが,その基本財産によって維持される成員の地位。オックスフォード,ケンブリッジ両大学のカレッジでは創設者により寄付された基本財産に応じて,一定数のフェロー(イギリス)やスカラーの枠を定め,フェローは小麦相場の変動に応じて基金から一定額の支給を受けた。フェローの中から学寮長や学監(dean),チューターなどの役職者が選ばれ,カレッジの運営にあたった。一般にフェローは聖職につき,かつ独身でなければならず,特定地域出身者に限定されるなどその選出にはさまざまな制約が課された。18世紀にはフェローシップの大多数は国教会聖職者の保持するところとなり,カレッジに在住するフェローは減少し,勉学の機会を提供するというよりも国教会における昇進の一段階とみなされるようになった。19世紀大学改革においてこれらの制約は段階的に廃止された。
著者: 中村勝美
[アメリカ合衆国]
アメリカのフェローシップ大学で何らかの経費の支給を受けて,おもに研究活動に参加する場合に得る地位を表す。博士号取得後の研究者が得る場合,大学院生が得る場合,そして学士課程学生が得る場合の3通りがある。最も多いのが博士号取得後に大学で研究活動に参加する場合に与えられるもので,これを「postdoctoral research fellowship」(博士後研究員制度(アメリカ))と呼び,この地位にある研究者を一般に「postdoctoral research fellow」と呼ぶ。この地位の給付の仕方は大別して二つあり,一つは大学の持つ経費(通常,研究室を主宰する教員の研究費)から支払われる場合であり,もう一つは全米科学財団(NSF)や国立衛生研究所(NIH)など研究を支援する財団から,研究者の応募と財団による選抜を経て支給される場合である。財団によるフェローシップを得ることは名誉なことであり,一般に研究経歴の上で評価がより高くなる。同様に大学院生の場合も,財団等から支援を受ける場合と大学の基金から支援を受ける場合がある。これらはいずれも競争的な経費として選ばれた大学院生に与えられ,一般に「graduate fellowship」(大学院特別奨学生制度(アメリカ))と呼ぶが,博士号取得前に受けるフェローシップなので「predoctoral fellowship」(博士前特別奨学生制度(アメリカ))と呼ぶこともある。学士課程の学生の場合も所属大学や財団などによる研究に参加するためのフェローシップがある。
著者: 赤羽良一
参考文献: Petrik, John F., Academic Opportunities, Graduate Group, 1997.
参考文献: ヴィヴィアン・H.H. グリーン著,安原義仁,成定薫訳『イギリスの大学』法政大学出版局,1994.
参考文献: 阿曽沼明裕『アメリカ研究大学の大学院』名古屋大学出版会,2014.
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
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