アメリカにある世界有数の医学・生命科学の研究機関。日本ではアメリカ国立衛生研究所とよばれることが多い。略称NIH。アメリカ健康福祉省公衆衛生局の下にあり、Institutesと複数形で示されるように、癌(がん)、脳卒中、糖尿病、感染症、老化、小児保健発達、精神衛生、ヒトゲノム(人間の全遺伝子情報)などの各専門研究所や医学図書館など計27機関によって構成される。自前の研究機関で独自に研究するだけでなく、世界中の有望な研究機関に年間約300億ドルの予算の8割以上を配分し、世界の医学・生命科学研究をリードしている。病気予防や健康増進を目的として基礎研究を重視しており、DNAの二重螺旋(らせん)構造を発見したJ・D・ワトソンが初代のヒトゲノム研究センターの所長を務めるなど、国立衛生研究所に在籍したノーベル賞受賞者は累計145人(2014年末時点)を数える。
1870年代のアメリカへの移民増加に伴い同国に入ってきたさまざまな伝染病を防ぐ目的で、1887年に設立された。本部はメリーランド州ベセスダ。職員数は約1万8000人で、うち約6000人が科学者である。2011年までの40年間に22の薬やワクチンを生み出した。1990年に世界で初めて遺伝子治療を実施。ヒトゲノム解析計画の結果に基づき、癌、パーキンソン病、アルツハイマー病の診断や治療研究に取り組むほか、コレステロール、脳など研究対象は幅広い。2001年、アメリカ政府が炭疽(たんそ)菌攻撃を受けて以来、バイオテロ防止も担当する。
日本では、内閣総理大臣安倍晋三(あべしんぞう)が2013年(平成25)、国立衛生研究所をモデルに、医薬品や医療機器の実用化を加速するための「日本版NIH」を設立する構想を掲げた。しかし、基礎研究軽視になると多くの学会が反発し、研究の重点方針を決める「健康・医療戦略推進本部」(2013年設置)と、同方針に沿って研究費を配分する国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」が2015年に発足するにとどまった。
[編集部 2015年10月20日]
アメリカ連邦政府の健康福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)の一機関。医学・生物系の研究を行う研究所群を持つとともに,大学等に対する研究助成機関の機能も有する。医学・生物系の大学等への研究助成額は世界最大の規模。本部はメリーランド州ベセスダ。年間予算約301億ドル(2014会計年度)。研究所群は国立がん研究所(National Cancer Institute: NCI)や国立心臓・肺および血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute: NHLBI)など,身体の部位や疾患の種類等に特化して組織された27の研究所とセンターにより構成されている。予算の80%以上は,毎年5万件分の競争的助成金として,約2500の大学や研究機関の約30万人の研究者の研究を支援,約10%の経費がNIH内の研究所にいる6000人の科学者の研究課題を援助している。
著者: 赤羽良一
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
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