日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォコン」の意味・わかりやすい解説
フォコン
ふぉこん
Bernard Faucon
(1950― )
フランスの写真家。プロバンス地方アプトに生まれる。生家の眼下に広がるラベンダー畑とアプトの町を眺めながら育つ。林間学校を営む生家では、少年たちのバカンスに興じる光景が繰り広げられた。この記憶が後のフォコンの作品のベースになっている。1973年ソルボンヌ大学哲学修士号を取得。
1966~76年絵画の制作を手がけ、古道具屋で1体のマネキン人形と出会って以来、マネキンの収集を始める。76年以降マネキンをプロバンスの自然の中に配し、バカンスの情景を再現して写し撮った演出写真を手がける。彼のハッセルブラッドのカメラの真四角なピント・グラスに浮かび上がる情景を、柔らかな調子を特徴とするフレッソン・プリントに焼付けた。
77年以降パリを皮切りに、78年バルセロナ、79、81年ニューヨークのレオ・キャステリ画廊などで個展を開催。80年写真集『夏休み』Les Grandes Vacancesを刊行する。同書により89年、最年少で国家グランプリ(写真部門)を受賞した。その後マネキンの姿は消え、「時の不確かな進化」(1981~84)、林間学校の部屋を舞台に撮った「愛の部屋」(1984~87)、「黄金の部屋」(1987~89)、切り抜いた文字を世界各地の自然のなかに配する「エクリチュール」(1991~93)などのシリーズを展開する。
93、94年、写真の楽しみ方、撮ることの情熱を伝えていく「写真の祭」を世界各地で開催するが、95年写真制作を中断する。以後、執筆活動、参加者を募った写真のプロジェクトなどを展開する。
[蔦谷典子]
『『飛ぶ紙』(1986・Parco出版)』▽『『偶像と生贄』(1991・Parco出版)』▽『『ベルナール・フォコン作品集 1977―1995』(1995・トレヴィル)』▽『Les Grandes Vacances (1980, Herscher, Paris)』▽『Les Chambres d'Amour (1987, William Blake, Bordeaux)』▽『Les Écritures (1993, William Blake, Bordeaux)』