日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォシヨン」の意味・わかりやすい解説
フォシヨン
ふぉしよん
Henri Joseph Focillon
(1881―1943)
フランスの美学・美術史学者。父ビクトル(1849―1916)は腐食銅版画(エッチング)家として知られ、同時代の画家の作品の複製をつくっていた。その影響もあって版画研究が出発点となった。高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)で学び、のちリヨン大学、パリ大学などの教授を務め、第二次世界大戦中はアメリカに渡ってエール大学で考古学と美術史を講じ、同大学の所在地ニュー・ヘブンで没した。彼の美学は、つねに技法について顧慮し、作品をつくる芸術家が技法に対するのと同じ方向で、課題に向かって作品を解釈し、その本質に迫ろうとした。美術史研究の範囲も広く、中世から近代・現代にまで及び、後進への影響も大きい。主著『形の生命』(1934)、『西欧の芸術――ロマネスク、ゴシック』(1938)のほか、『仏教芸術』(1921)、『19、20世紀ヨーロッパ絵画史』(1928)などがある。
[鹿島 享]
『神沢栄三・長谷川太郎他訳『西欧の芸術1 ロマネスク』上下(1976・鹿島出版会)』▽『神沢栄三・長谷川太郎他訳『西欧の芸術2 ゴシック』上下(1976・鹿島出版会)』