改訂新版 世界大百科事典 「フサカサゴ」の意味・わかりやすい解説
フサカサゴ (総笠子)
カサゴ目フサカサゴ科フサカサゴ属の海産魚の総称,またはそのうちの1種を指す。眼の上方にふさ状の皮質突起があることに由来した名称。英名はフサカサゴ科を総称してscorpion fish(さそりのような魚)とかrock fish(岩のような魚)などといい,とげや色彩などに基づいている。フサカサゴ属は日本近海に7種3亜種が分布する。フサカサゴScorpaena neglecta neglectaは太平洋岸は千葉県以西,日本海側は新潟県以西の各地沿岸および朝鮮半島,台湾に分布し,やや深い岩礁地帯で生活する。全長25cmほどになる。頭部に多数のとげがあること,胸びれの付け根にふさ状の突起がないこと,眼の後と鰓蓋(さいがい)上部に細かいうろこがあるのが特徴である。雄の背びれ棘状(きよくじよう)部には1個の大きな黒色斑がある。卵生で,北アメリカ産の同属種の例では卵は長さ25cm,西洋ナシ形をした無色透明のゼラチン状の卵塊基質に埋もれて海面を漂う。孵化(ふか)した稚魚はしばらくして海底生活をする。あまり商品価値はない。
執筆者:谷内 透
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報