日本大百科全書(ニッポニカ) 「フッ素燐灰石」の意味・わかりやすい解説
フッ素燐灰石
ふっそりんかいせき
apatite-(F)
燐灰石中もっとも一般的な種。これまでこの種をさして「燐灰石」とよんでいたが、現在では細分された名称が用いられ、燐灰石は系列の名称(グループ名)を表す。フッ素燐灰石は、各種火成岩、変成岩、熱水鉱床、熱水交代岩、接触交代鉱床(スカルン型鉱床)、正マグマ性鉱床、花崗(かこう)岩質ペグマタイト、閃(せん)長岩~霞石(かすみいし)閃長岩質ペグマタイト中に産するほか、堆積(たいせき)岩を構成する。なお、動物の骨や歯を構成するものは、結晶度の低い水酸燐灰石である。自形は六角柱状あるいは板状を呈するが、各種岩石中では前者の形態のものが多い。岐阜県中津川(なかつがわ)市苗木産のものにはイットリウム族希土に富んだものがある。栃木県佐野市(旧葛生(くずう)町地区)の苦灰岩層の母岩をなす堆積岩中にはフッ素燐灰石岩ともいうべきほとんど単鉱物からなる岩石がある。英名はギリシア語で「欺く」を意味する語に由来する。これは、この鉱物がそれまで数多くの種に誤認されていたことによるものである。
[加藤 昭]