Y.原子番号39の元素.電子配置[Kr]4d15s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素イットリウム族の一つ.当初,発見者のJ. Gadolinは元素名を,鉱物ガドリン石の産地スウェーデンの村名ytterbyにちなんでytterbiumとしたが,のちにyttriumに短縮され,ytterbiumは70番元素に与えられた.宇田川榕菴は,天保8年(1837年)に出版した「舎密開宗」で依多母(イトリュウム)としている.原子量88.90585(2).質量数89(100%)の安定同位体と,質量数76~108までの放射性同位体が知られている.1794年にJ. Gadolinにより発見され,分離は,1843年,C.G. Mosanderによりなされた.ガドリン石,モナズ石,ゼノタイムなどに含まれる.
地殻中の存在度20 ppm.埋蔵量一位は中国,ついでアメリカ,オーストラリア.灰色の金属でYF3のCa金属による還元で得られる.融点1522 ℃,沸点3338 ℃.密度4.47 g cm-3(六方晶系).標準電極電位 Y3+/Y-2.37 V.第一イオン化エネルギー6.38 eV.空気中では容易に酸化される.酸に可溶,アルカリに不溶.希土類元素に含めるが,外殻電子は4d15s2でdグループの元素.イオン半径は0.106 nm でDy,Hoに近い.酸化数3.DyやHoの化合物に似た性質を示す.化合物は一般に無色.希土類と同様に酸化物,フッ化物,シュウ酸塩,水酸化物などは水に不溶,塩化物,硫酸塩は水に易溶.イットリウムの水酸化物はランタンよりは弱いが,かなり強い塩基性をもっている.
YBa2Cu3O7(YBCO)は高温超伝導体の一つで,超伝導転移温度-93 K(-180 ℃).酸化イットリウムY2O3はユウロピウム賦活赤色蛍光体として,カラーテレビなどに多量に使用されている.Y2O3は可視光に透明なセラミックスの原料となる.Eu:Y2O2SはX線イメージインテンシファイア,YAG(yttrium aluminium garnet):Y3Al5O12はレーザー素子として有名である.YIG(yttrium iron garnet):Y3Fe5O12は,たとえば高周波用アイソレーターとして携帯電話の部品に用いられる.[CAS 7440-65-5]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
周期表第ⅢA族に属する希土類元素の一つ。1794年フィンランドのガドリンJohann Gadolinは,スウェーデンのストックホルム近郊イッテルビーYtterby産の鉱物から新しい酸化物を発見し,産地にちなんでイッテルビアとよんだが,のちイットリア(イットリウムの酸化物の意)とよぶようになった。1843年スウェーデンのモサンデルCarl Gustav Mosanderはこのイットリアを3成分(イットリア,テルビア,エルビア)に分けることに成功し,その一つであるイットリアから得られた元素に旧名イットリウムを保留し,テルビア,エルビアから得られた2元素にそれぞれテルビウム,エルビウムの名を与えた。主要鉱石はガドリン石,モナザイト,ゼノタイムなど。イットリウムの単体は灰色の金属で,展性,延性はあまりない。金属は,フッ化物YF3と塩化カルシウムを混合融解し,金属カルシウムおよびマグネシウムで還元してマグネシウムとの合金をつくり,これを蒸留してマグネシウムを除いて得る。空気中で容易に表面が酸化される。また,空気中では470℃,酸素中では400℃で発火する。熱水とは反応して,水を分解する。酸に溶けるが,アルカリには溶けない。化学的性質からは希土類元素中イットリウム族に分類される。
執筆者:中原 勝儼
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周期表第3族に属し、希土類元素の一つ。1794年、フィンランドのガドリンによりストックホルム近郊のイッテルビーYtterby産の鉱石中からみいだされ、新元素の酸化物として初めイッテルビアとよばれた。これはのちに、イットリア、テルビア、エルビアの3種に分けられたが、そのうちのイットリアから新元素として確認されたのでイットリウムと命名された。おもな鉱石はガドリン石、モナズ石、ゼノタイムなど。銀白色の金属で、展性、延性はない。空気中で表面が酸化されやすい。熱水で分解され、酸に溶けるが、アルカリには溶けない。希土類元素のなかでは、化学的性質からイットリウム族として分類される。
[守永健一]
イットリウム
元素記号 Y
原子番号 39
原子量 88.9059
融点 1522℃
沸点 3340℃
比重 4.469
結晶系 六方
元素存在度 宇宙 (Si106個当りの原子数)
4.6(第42位)
地殻 33ppm(第26位)
海水 (/mgL-1)0.0003
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…周期表元素記号=Tb 原子番号=65原子量=158.9254地殻中の存在度=0.9ppm(57位)安定核種存在比 159Tb=100%融点=1356℃ 沸点=2800℃比重=8.272電子配置=[Xe]4f95d06s2 おもな酸化数=III,IV周期表第IIIA族,希土類元素に属するランタノイド元素の一つ。1843年スウェーデンのモサンデルC.G.Mosanderが,それまでイットリウム酸化物とされていたイットリアから三つの元素を分離した。そしてイットリウムの名称のもととなった産地イッテルビーYtterbyから,それを三つに分け,イットリウムyttrium,テルビウムterbium,エルビウムerbiumと命名した。…
※「イットリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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