ペグマタイト(読み)ぺぐまたいと(英語表記)pegmatite

翻訳|pegmatite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペグマタイト」の意味・わかりやすい解説

ペグマタイト
ぺぐまたいと
pegmatite

花崗(かこう)岩体の中や花崗岩体の周囲の岩石の中に岩脈状、レンズ状あるいは脈状をなして産する粗粒・完晶質の花崗岩様の岩石。巨晶花崗岩ともいう。結晶の大きさは数センチメートルから数十センチメートルが普通。ときには数メートル、10メートル以上のこともある。ペグマタイト石英アルカリ長石を主体とすることが多く、アルカリ長石の中に石英が楔形(くさびがた)文字のような形で点在する(文象連晶という)のが特徴である。ペグマタイトでは鉱物組成の違う部分が帯状に配列する傾向がある。アルカリ長石と石英を主とした単純な鉱物組合せのものから、希元素を含む100種以上の鉱物からなるものまで多様である。造岩鉱物は石英、アルカリ長石(微斜長石、パーサイト)、斜長石白雲母(しろうんも)、黒雲母、燐灰(りんかい)石、ざくろ石、電気石、褐簾(かつれん)石など。希元素を主成分とする鉱物として、緑柱石・クリソベリル・フェナク石(ベリリウム)、電気石・斧石(おのいし)(ホウ素)、燐灰石雲母・トパーズ・電気石(フッ素)、鱗雲母・リチア輝石(リチウム)、錫石(すずいし)(スズ)、鉄マンガン重石(タングステン)、ジルコンジルコニウム)などを伴う。そのほか希土類元素やモリブデンニオビウムタンタル、ウランなどの希元素を含む鉱物もペグマタイト中に産する。ペグマタイトは陶磁器の原料である長石を取り出すために採掘される。日本では福島県石川地方などで採掘されている。

 閃長(せんちょう)岩、霞石(かすみいし)閃長岩、斑糲(はんれい)岩、粗粒玄武岩の岩体の中に、それらとよく似た鉱物組成の粗粒または巨粒の部分があるとき、それらの部分を閃長岩ペグマタイト、霞石閃長岩ペグマタイト、斑糲岩ペグマタイト、粗粒玄武岩ペグマタイト(またはドレライト質ペグマタイト)という。ペグマタイトの多くは、貫入岩体をつくったマグマが結晶するとき、最後に揮発性成分の濃集した残液が生じて、揮発性成分が結晶の成長を速める働きをするため、大きな結晶の集合体となったものである。

[千葉とき子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペグマタイト」の意味・わかりやすい解説

ペグマタイト
pegmatite

深成岩半深成岩の粗粒貫入岩体に密接に伴い,本体の岩石よりもさらに粗粒な岩石の総称。花崗岩質岩に伴うものが最も多い。普通貫入岩体の周辺部や頂部に脈状あるいは塊状を呈して産出する。マグマの結晶作用の末期に流体相の存在する条件下で生成したものと考えられている。主成分鉱物組織は主岩体に似ていて,花崗岩質ペグマタイトは石英,長石,雲母を主とし,斑糲岩質ペグマタイトは角閃石,斜長石を主とする。花崗岩質ペグマタイトには,花崗岩には少量しか存在しないリン灰石,電気石,蛍石などが相当量含まれるほか,マグマの分化作用の末期に濃集する元素,リチウム,鉛,ホウ素,ウラン,トリウム,希土類元素などに富む鉱物を多量に含むものがあり,しばしばこれら諸元素の鉱床として稼行対象になる。ペグマタイト中の鉱物は,しばしば大きな流体包有物を有している。マグマの結晶作用ではなく,既存岩石の変成分化作用によって形成されるペグマタイトもある。

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