ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コリア」の意味・わかりやすい解説
コリア
Corea, Chick
[没]2021.2.9. フロリダ,タンパ
チック・コリア。アメリカ合衆国のジャズピアニスト,作曲家,バンドリーダー。本名 Armando Anthony Corea。クラシックの教育に裏打ちされた演奏スタイルや旋律は,数多くのミュージシャンに尊敬され模倣された。イタリア系のトランペット奏者の父の影響のもと幼少期より音楽に親しみ,ピアノやドラムを習い始める。コロンビア大学,ジュリアード音楽院に学び,1960年代半ばにブルー・ミッチェル,ウィリー・ボボ,カル・ジェイダー,ハービー・マンと,1960年代終わりにはスタン・ゲッツ,マイルス・デービスと共演を果たした。1970年代に入り,フリージャズのカルテット,サークル Circleや,フュージョングループのリターン・トゥ・フォーエバー Return to Foreverの二つのグループを率い,世界的な人気を博した。ビル・エバンズ,ホレス・シルバー,マッコイ・タイナーの手法に現代作曲家パウル・ヒンデミットの要素を加えた演奏スタイルは,当時の若いジャズピアニストの手本となった。また,彼の左手のコード進行の多くは 4度を奏でていた。作曲や演奏にはスペインの要素がふんだんにあり,特に楽曲『スペイン』Spain,『ラ・フィエスタ』La Fiestaは人気が高い。また『ウィンドウズ』Windowsはジャズのスタンダードにもなっている。軽快かつ遊び心のある旋律に,シンセサイザや電子鍵盤楽器の音,ロックやスペイン音楽のリズムを加えることで,ジャズの枠をこえた聴衆を獲得した。21世紀に入ってからは,他の音楽家との共演に力を注ぎ,バンジョー奏者のベラ・フレックと演奏したり,自身の曲にスキャットを添えるのに歌手のボビー・マクファーリンを起用したりした。また,すでに活動を停止していたリターン・トゥ・フォーエバーを再結成した。ビブラフォン奏者ゲーリー・バートンと組んだアルバム『ホット・ハウス』Hot House(2012),スパニッシュ・ハート・バンドとのアルバム『アンティドート』Antidote(2019)でそれぞれ自身 22度目,23度目のグラミーを獲得した。さらに没後も 2部門で同賞に輝いた。そのほかラテン・グラミー賞も複数回受賞している。
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