コリア(読み)こりあ(英語表記)Chick Corea

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コリア」の意味・わかりやすい解説

コリア
Corea, Chick

[生]1941.6.12. マサチューセッツチェルシー
[没]2021.2.9. フロリダ,タンパ
チック・コリア。アメリカ合衆国のジャズピアニスト,作曲家,バンドリーダー。本名 Armando Anthony Corea。クラシックの教育に裏打ちされた演奏スタイルや旋律は,数多くのミュージシャンに尊敬され模倣された。イタリア系のトランペット奏者の父の影響のもと幼少期より音楽に親しみ,ピアノやドラムを習い始める。コロンビア大学,ジュリアード音楽院に学び,1960年代半ばにブルー・ミッチェル,ウィリー・ボボ,カル・ジェイダー,ハービー・マンと,1960年代終わりにはスタン・ゲッツ,マイルス・デービスと共演を果たした。1970年代に入り,フリージャズのカルテット,サークル Circleや,フュージョングループのリターン・トゥ・フォーエバー Return to Foreverの二つのグループを率い,世界的な人気を博した。ビル・エバンズ,ホレス・シルバー,マッコイ・タイナーの手法に現代作曲家パウル・ヒンデミットの要素を加えた演奏スタイルは,当時の若いジャズピアニストの手本となった。また,彼の左手のコード進行の多くは 4度を奏でていた。作曲や演奏にはスペインの要素がふんだんにあり,特に楽曲『スペイン』Spain,『ラ・フィエスタ』La Fiestaは人気が高い。また『ウィンドウズ』Windowsはジャズのスタンダードにもなっている。軽快かつ遊び心のある旋律に,シンセサイザや電子鍵盤楽器の音,ロックやスペイン音楽のリズムを加えることで,ジャズの枠をこえた聴衆を獲得した。21世紀に入ってからは,他の音楽家との共演に力を注ぎ,バンジョー奏者のベラ・フレックと演奏したり,自身の曲にスキャットを添えるのに歌手のボビー・マクファーリンを起用したりした。また,すでに活動を停止していたリターン・トゥ・フォーエバーを再結成した。ビブラフォン奏者ゲーリー・バートンと組んだアルバム『ホット・ハウス』Hot House(2012),スパニッシュ・ハート・バンドとのアルバム『アンティドート』Antidote(2019)でそれぞれ自身 22度目,23度目のグラミーを獲得した。さらに没後も 2部門で同賞に輝いた。そのほかラテングラミー賞も複数回受賞している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コリア」の意味・わかりやすい解説

コリア
こりあ
Chick Corea
(1941―2021)

アメリカのジャズ・ピアノ奏者、作曲家。マサチューセッツ州チェルシー生まれ。イタリア系。本名アルマンド・アンソニー・コリアArmando Anthony Corea。6歳からピアノを学び、1962年ラテン音楽のモンゴ・サンタマリア楽団に参加。ウィリー・ボボ、ブルー・ミッチェル、ハービー・マンなどの楽団を経て、1968年にアルバム『ナウ・ヒー・シングス、ナウ・ヒー・ソブス』Now He Sings, Now He Sobsを発表して注目された。同年マイルス・デービスのグループに参加、1970年に独立。サックス奏者のアンソニー・ブラクストンAnthony Braxton(1945― )らと前衛ジャズのクァルテット「サークルCircle」を結成したが、短期間で解散。1972年にブラジル出身の歌手フローラ・プリムFlora Purim(1942― )を含むグループ「リターン・トゥ・フォーエバーReturn to Forever」を結成。同グループは、ロックやラテンの要素を吸収した多彩な楽しい音楽で人気をよび、フュージョンを代表するグループとなった。1980年に解散。その後はさまざまな編成で、美と幸福を信条とする音楽の演奏を続けた。作曲の代表作には『ラ・フィエスタ』La Fiesta(1967)、『スペイン』Spain(1972)などがある。

[青木 啓]

『木島始訳『ぼくの音楽ぼくの宇宙』(1978・晶文社)』『白石かずこ訳『ミュージック・ポエトリー』(1982・スイングジャーナル社)』『山下邦彦著『チック・コリアの音楽――ポスト・ビバップの真実とジャズの可能性を求めて』(1995・音楽之友社)』

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