フラゴナール(読み)ふらごなーる(英語表記)Jean Honoré Fragonard

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フラゴナール」の意味・わかりやすい解説

フラゴナール
ふらごなーる
Jean Honoré Fragonard
(1732―1806)

フランスの画家。南フランスのグラースに生まれる。少年時代に家族とともにパリに移り、シャルダンブーシェ師事後者の影響を強く受けた。1752年ローマ賞を得て、エコール・ロワイヤル・デ・ゼレーブ・プロテジエでカルル・ファン・ローの門下生として学んだのち、56年から5年間ローマのフランス・アカデミーに留学。ピエトロ・ダ・コルトーナやティエポロなどのバロック様式の装飾画にひかれるとともに、ローマ近郊の写生を通して風景画への関心を呼び覚まされる。その作風は、イタリアの影響とともに、レンブラントロイスダールなどのオランダ画派への共鳴も示す。

 1765年、歴史画『コレススとカリロエ』によりアカデミーの準会員となり、有望な装飾画家としての道を歩き始めるが、まもなく風俗画が自分の資質に適していることに気づき、アカデミーやサロンから遠ざかり、自由な立場で私的な顧客の注文に応じて、生きる喜びにあふれた官能的な主題の作品を多く手がけるようになる。フランス革命後は、ダビッドの紹介で美術館の管理長を務めたりするが、晩年は社会的にも経済的にも恵まれず、パリに没した。フランス18世紀の華やかさを代表する最後の画家と考えられており、代表作に『ぶらんこ』(ロンドン、ウォーレス・コレクション)、連作『恋のなりゆき』(ニューヨークフリック・コレクション)、『音楽練習』(ルーブル美術館)などがある。

[黒田亮子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フラゴナール」の意味・わかりやすい解説

フラゴナール
Fragonard, Jean-Honoré

[生]1732.4.5. フランス,アルプマリティム,グラース
[没]1806.8.22. フランス,パリ
フランスの画家。 A.ワトー,J.シャルダンとともにフランス・ロココ美術を代表する画家。 1742年からパリに出てシャルダン,F.ブーシェに師事。 55年王立美術学校に入学,56年から5年間イタリアに留学。帰国後は宮廷貴族と交わり,特にデュ・バリー夫人やポンパドゥール夫人のために制作した。 64年アカデミー会員。ルイ王朝末期の享楽的な宮廷風俗を甘美な色彩と軽妙なタッチで描き,はなやかな生活をおくっていたが,革命後は落ちぶれて悲惨な晩年を過した。主要作品はルーブル美術館蔵の『音楽のレッスン』『水浴の女たち』『インスピレーション』および『ぶらんこ』 (1767,ロンドン,ウォレス・コレクション) ,『読書する若い娘』 (ワシントン D.C.,ナショナル・ギャラリー) 。

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