翻訳|etching
美術用語としては,銅板など金属表面を酸で腐食して凹版をつくる技法,および,これを利用して刷った版画をさす(〈銅版画〉の項参照)。広くは,表面を化学的または電気化学的に溶解する加工法をいう。腐食あるいは食刻という訳語があり,またケミカルミーリングchemical milling(化学研削)とも呼ばれる。力を加えない無歪加工法であるので,機械加工によって生じた表面の変質層や内部ひずみの除去に適している。硬質材料も軟質材料もともに機械加工には不適当であるが,エッチングは材料の硬軟に関係なく適用できる。表面の一部を耐薬品性保護皮膜(エッチングレジスト)で被覆し,残部を溶解することで複雑な形状の加工が可能である。古くから銅版画の製作やネームプレートの製作,印刷用製版に利用され,近年ではプリント配線基板や集積回路の作成に不可欠の技術である。大きな被加工体の処理,多量同時処理などにも適しているが,一般に加工速度が遅いのが難点である。ABS樹脂やポリプロピレンは表面に金属めっきが可能なプラスチック材料として多用されているが,この場合,下地処理としての化学エッチングと触媒化処理が密着性を左右する。エッチング処理液は酸化剤,錯化剤,緩衝剤を含む。酸化剤の作用を電気化学溶解でおきかえたものが電気化学エッチングである。電解コンデンサーに用いられるアルミニウム箔はこの方法でエッチングし,表面に凹凸をつくって表面積を50~100倍に増加させてある。また金属組織を調べるには,構成相の化学溶解性の差を利用したエッチングによる組織の現出法が多用される。
執筆者:増子 昇
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(荒川泰彦 東京大学教授 / 桜井貴康 東京大学教授 / 2007年)
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[バイポーラー・プレーナーICの出現]
同一半導体基板中で回路を構成することのもっとも大きな問題は,回路を構成する各回路素子を電気的に分離することである。上記のテキサス・インスツルメント社のICは,この素子分離にメサエッチングを使用していた。ほんとうのICの時代はプレーナー技術の開発から始まったといえる。…
…平らな銅などの金属面に手彫りなどによって彫りくぼめる方法と,写真を利用して彫りくぼめる方法(いわゆる写真製版の利用)とに大別される。前者はさらに彫り方によって,ドライポイント,メゾチントなど直接金属面を彫る彫刻凹版(直刻凹版ともいう)と,版材に薬品を作用させ腐食によって彫りくぼめるエッチング,アクアチントなどの食刻凹版に分けられるが,実際にはこれらの手法を混用することも多い。後者の写真製版によるものはいわゆるグラビアである。…
…その後間もなく浮世絵界を去り,南蘋(なんぴん)派の宋紫石から写生体花鳥画を学び,漢画家となったが,肉筆美人画も描いた。80年(安永9)ころに平賀源内と秋田蘭画の小田野直武の影響により洋風画に転向し,83年(天明3)日本最初の腐銅版画(エッチング)を作り,以後西洋銅版画の模刻と日本風景の銅版画を制作し,油絵も習得した。88年長崎に旅行し,18世紀末から19世紀初頭にかけて油絵の洋人図や日本風景図を多く描き,その一部を懸額として各地の社寺に奉納し,洋風画の普及に尽くした。…
…彫刻銅版画の熟達には他の技法以上に修練を要するし,でき上がりも古典主義的な完結感があるので,19世紀後半には時代の好みと合わなくなったが,20世紀には少数ながら復活した。
[腐食銅版画]
彫刻法についで重要な技法は腐食法,いわゆるエッチングetching(フランス語ではオーフォルトeau‐forte)である。製版法は硝酸に対する防食剤ground(フランス語ではvernis)を塗付した銅板上に針でひっかいて描く。…
…彫刻銅版は16世紀にはデューラーらドイツの画家たちとイタリアのライモンディ,フランドルのファン・レイデンらによって技法的にも完成され,16世紀末から17世紀にかけて技法的な頂点を極める。しかし17~18世紀にはエッチングでほぼ全体を描き,顔面部など主要部分をビュラン彫りで仕上げる複合技法が盛んになり,おもに専門版画家の,したがって複製版画的な作品制作が大部分を占めることになった。(3)エッチングetching 金属,主として銅板に線や面を腐食して版をつくる手法で,腐食銅版画といわれる。…
※「エッチング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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