日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャルダン」の意味・わかりやすい解説
シャルダン
しゃるだん
Jean-Baptiste Siméon Chardin
(1699―1779)
フランスの画家。生涯をパリに過ごす。ピエール・ジャック・カーズおよびノエル・ニコラ・コワペルに師事し、1728年、ラルジリエールらの推挙を得て王立アカデミー会員として認められ、『赤えい』(ルーブル美術館)を提出する。静物画を主として描き、その迫真的な筆力、強い構図、静かな雰囲気で評価を得たが、公の仕事は、フォンテンブロー宮の修復など、さほど「満足できるものではなかった」ため、オランダ風の風俗画、人物画に転じ、とくに風俗画では、フランス的な典雅さと静かな構成で評価を得た。40年ルイ15世に謁見を許されて献じた『食前の祈り』(ルーブル美術館)はその代表作。70年ごろまで彼の名声は高く、生活は安定していたが、最晩年は不遇であり、また視力の弱化によってパステル画に転じている。ディドロたちによって称揚された彼の静物画と風俗画は、19世紀の絵画(たとえばセザンヌなど)に先駆する近代性とロココの魅惑のみごとな合一であるといえよう。
[中山公男]