日本大百科全書(ニッポニカ) 「フラハティ」の意味・わかりやすい解説
フラハティ
ふらはてぃ
Robert J. Flaherty
(1884―1951)
アメリカの記録映画監督。ミシガン州のアイアン・マウンテンに生まれる。鉱山学校に学び、探検家となり、カナダ北部踏査を通じて長編記録映画をつくるが、ネガを焼失する。1920年に現像装置、焼付け機、映写機までも携えて同地を再訪、イヌイットと長期間居住をともにし、自然と闘う現地人の生活を撮影する。これが記録映画史上革新的な『極北のナヌーク(極北の怪異)』(1922)であり、イギリス・ドキュメンタリー派に多大な影響を及ぼす。続く南太平洋を舞台にした『モアナ』(1926)は興行的に失敗、『南海の白影』(1928)、『タブウ』(1931)も共作ゆえに不本意な結果となる。1931年にジョン・グリアスンJohn Grierson(1898―1972)に招かれて渡英し、グリアスンとともに『産業英国』(1931)を製作。その後、アイルランドで孤島の漁師の厳しい生活を描いた秀作『アラン』(1934)を完成させる。商業主義に妥協せず、自己の信念を貫き、『ルイジアナ物語』(1948)を遺作として、アメリカのバーモントで死去した。
[奥村 賢 2022年6月22日]
資料 監督作品一覧
極北のナヌーク(極北の怪異) Nanook of the North(1922)
モアナ Moana(1926)
産業英国 Industrial Britain(1931)
アラン Man of Aran(1934)
ルイジアナ物語 Louisiana Story(1948)